#AQM

あ、今日読んだ漫画

#邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12 評論(ネタバレ注意)

マリア悪い顔しとんな。あとスカジャン女子大好き。

高校の「映画を語る若人の部」に入部したプレゼン下手の映子が、毎回好きな邦画を1本トンデモ説明でプレゼンして部長がツッコむ話。

昭和の少女漫画リスペクトな画風。

ネタはほぼ無限に供給され続ける上に、パッションよりも計算で回す作風で面白さも安定して高止まりしてるし、アニメ化・実写化がクッソやりづらいというかほぼ不可能なこと以外は本当に良い漫画作品。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

マリアも作者のペルソナなんで、作者も読破したんだろうと思います。

結構「学究肌」だよね…5万ページ…

「映画のプレゼン」を主軸テーマにした作品ですが、部長と映子の未満恋愛ラブコメを軸に、マリア、ヤンヤンなどの強烈な個性を持つ美少女キャラ、特撮部などがそこに加わる、賑やかで楽しくも羨ましい、優れた青春モラトリアム空間コメディ漫画になっていて、相変わらず映画に詳しくない自分もとても楽しく読めています。

今巻のお題は

・『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪奇伝・魔笛 エロイムエッサイム』

・『リゾートバイト』

・『シティーハンター』

・『生きる』

・『ライヴ』

・『RIKI-OH/力王』

・『カラオケ行こ!』

・『砂の器』

・『ゲゲゲの鬼太郎 大海獣』

・『温泉シャーク』

・『(描きおろし)KING OF PRISM-Dramatic PRISM.1-』

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

 

近刊での変化①

あとがきで、「この作品を長く続けたい意向」をたびたび表明されています。正直嬉しい。

面白さがずっと安定して高止まりしていて、ストーリーの縦軸を持たない「青春モラトリアム空間漫画」として実は現役屈指の漫画じゃないのかなと思います。

映画の好みがキャラクターに直結した魅力的なキャラが既に読者に受け入れられ、ラジオのトーク番組などでリスナーからのハガキでお題を提供されるように旧作・新作の映画の話題・ネタが無限に供給され続ける、作家の手腕も相まって相当美味しい建て付けの作品。

「ヒットにしがみつく」とかのネガティブな意味じゃなくて(引き伸ばしもクソもなく『こち亀』型の単話完結ですし)、

「既に面白く、この先も面白い」

目処がついていて、終わらすのもったいないよねw


近刊での変化②

邦キチの「乙女の顔」が描かれるようになりました。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

前までは結構、部長に対する恋愛面の情緒に限っては性愛の概念を理解していない「懐いてる近所の犬」、あるいは「女子高生ロボ」みたいなヒロインだったんですが、今巻だけでも「乙女の顔」を2回記録。

①と似たような意味で、「ラブコメ漫画」としても美味しい建て付け・美味しいポジションの漫画。

ジャンルとしての「恋愛・ラブコメ漫画」、特にメジャー誌の看板ラブコメ作品というのは注目され一定以上売れる代わりに、それぞれに「恋愛観」「ラブコメ論」を抱く、私を含む読者たちからの圧も大変強く、

anond.hatelabo.jp

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「過去のラブコメ史に立脚した上で新たなラブコメの地平を切り拓く」

保守性と革新性を常に同時に求められる求道的な修羅の道で、批判もされがち、炎上もしがちなジャンルです。

「恋愛・ラブコメ漫画」は本分が「恋愛・ラブコメ」である以上、ラブコメ要素の進展が性急すぎても「早すぎる、拍子抜け、もっと読みたかった」と言われ、

『幼稚園WARS』4巻より(千葉侑生/集英社)

かといって進展しなさすぎてもいけない、「長い、じれったい、引き伸ばしてないでさっさとくっつけ、くっついたらさっさと終われ」と言われる、難しい舵取りが迫られます。

特に

「無垢で一途でどこか幼いけどバブみもあって、清楚で聖女で処女だけどなんとなくミステリアスでなんかエッチ、完璧超人ながらほっとけないポンコツ属性やか弱さも併せ持つけど世間的には高嶺の花」

というわけのわからない高い要求をされるメインヒロインが、たびたび批判の槍玉にあがりがちです。

現役で自分が読んでるのだと『僕ヤバ』あたりかな、薄氷を踏むような舵取り。

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中学生の恋愛に「あーでもないこーでもない」と口出ししたり怒ったりするおじさんおばさんがたくさんいます。

対して、映画プレゼンギャグコメである『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』、そんな圧も弱く、ラブコメとして割りと自由です。

サッカーで言うと、360度を敵に囲まれてマークの厳しいトップ下ではなく、スペースに恵まれ180度からしか圧を受けないウィングのポジションで、近年のサッカーではCFと並んで最も得点が期待されるポジションです。何の話。

もちろん「無制限に何を描いても許される」わけではないんですけど、「ラブコメ以外」が作品の本分である以上、少なくとも

「気が向かなければラブコメ要素を描かない、進展させない」

自由があります。

おまけに基本、単話完結で時制も流れない「サザエさん時空」。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

非ラブコメメインの分野特化型の漫画の「ついで」みたいなラブコメ要素、昔から萌えますよね。

話それるけど、ルーク先輩とマリア、対談させたらめっちゃ盛り上がりそうだなw

二人と飲みに行ってずっと話聞いてたいw


近刊での変化③

いつのまにか、エピソードタイトルや目次で、漫画原作の映画についていちいち「(実写版)」の表記を入れるのをやめるようになりました。

もともと漫画原作の実写化映画はこの作品の主要モチーフで、実写化に際するトンデモ改変を面白おかしく語るのは生命線でしたが、映画評論としての「実写化のオーソリティ」としての自覚の芽生えかもしれませんw

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

今巻のシーズン12、連載期間中にあの事件がありました。

あの事件の後に発売された前巻シーズン11の描きおろしを含めて、

「実写化の是非」

「実写化における改変の是非」

「愛される実写化、愛される改変」

を、ハイテンションにギャグをコメディを散りばめながらも、

「押しつけがましくならないように」

「誰かを非難したり傷つけたりしないように」

気をつかいながら提言するエピソードが増えました。

作者に責任があることではないんですが、事件の影響で「実写化」「改変」にネガティブな注目が集まったことは、ちょっとした逆境だったと思います。

が、

「愛する実写映画のために、自分の仕事でできる精一杯をやろう」

という割りと真っ向勝負で真摯で誠実な姿勢が見えて、とても好感をもって読みました。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season12』より(服部昇大/集英社)

長くなりましたけど、作品が長く続きそうで嬉しいし、映子だけじゃなくてヤンヤンもマリアも可愛かったし、紹介された映画は一本も観たことないけど、相変わらず今巻も楽しく面白かった、という話です。

 

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