
表紙は「幕末の四大人斬り」と称される薩摩藩士・田中新兵衛。
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今巻中のエッセイで作者が
「倫理観が大人向け・青年誌向けのキャラ」
と言明する暗殺者。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
モーニング誌で連載、TVアニメ化・TVドラマ化もされるなど好評のうちに第一部が完結した、
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『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』作者・泰三子の新作。
幕末、黒船の来航によって徳川260年の治世の太平は破られ、幕府を頂点とした武士階級による国論は割れ、それは将軍位の継承問題にも及んだ。
後の徳川慶喜を推す一橋派の急先鋒、薩摩藩主の島津斉彬は、茫洋とし空気が読めないながら大器の片鱗を感じさせる藩士・西郷吉之助を西洋の英雄・ナポレオンになぞらえ、新時代の日本のリーダーとなってくれることを期待し重用。
動乱の時代の重要人物として徐々に頭角を表し、幕府や他藩からも警戒される存在となりつつあった西郷の、そのサポート役として白羽の矢が立ったのは、西郷と同じく賢君・斉彬公に心酔し、目端が効いて空気も読めて、悪いことも考えられちゃうツッコミ役の便利マン藩士・川路正之進。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
後の明治政府下における初代の大警視(警視総監)、川路利良その人だった。
動乱の時代、果たして川路は斉彬公の命のもと、西郷吉之助のサポート役として日本を近代化に導くことができるのか…
薩摩藩士から幕末を経て明治初期に維新政府の要職を務め、「近代警察の父」「日本警察の父」渾名され、その語録が未だ警察官のバイブルとして読み継がれる、史実の人物・川路利良の伝記フィクション。
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漫画好き向けにメジャー作品を使って説明しようとすれば、『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』で「斎藤一の上司の警視総監だった人」という説明がわかりやすいでしょう。

『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』7巻(和月伸宏/集英社)
史書に残っていない人物の性格や言動のディティールは、作家の癖・好み・エンタメサービス精神に基づいた想像で「面白おかしく」補完されるフィクション。
年表に準拠したシリアス・イベントの間を、『ハコヅメ』以来の軽妙なコミカルな会話劇のギャグコメディで埋めていく作風。
硬くなりがちな歴史フィクションを、キャラ中心に楽しく読める工夫がなされつつも、『ハコヅメ』で見せていた「社会や組織、人間の闇」は時代性もあってより濃くなっています。
自分は出身が鹿児島なのと、司馬遼太郎をひと通り履修済みなので、毎度お馴染み郷土の有名人たちが活躍するお話、楽しく読めてます。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
多かれ少なかれ「地元の山」には「帰ってきた」と実感させるものがありますよね。
自分も桜島を見ると「帰ってきた」を実感します。
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今巻は、前巻?前々巻?以来の、下関までのお使い道中の終わり、長州藩の志士たちとの初対面、西郷の帰還、薩摩藩の率兵上京、多賀者残党の再びの策謀、寺田屋事件の直前まで。
流れ的には、暴発寸前の尊王派過激派を薩摩藩上層部がどうにか誤魔化し誤魔化しソフトランディングを試み、有能で便利な現場担当・主人公の川路がそれに巻き込まれ続ける、というところ。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
「斉彬原理主義」的な西郷が島流しから帰還し、政治的な小細工の数々が吹っ飛ばされるも、川路は西郷がどんなに滅茶苦茶でも逆らえない、というw
女性キャラが多賀者のタカぐらいしか登場せず、青年〜おっさんたちによるむさ苦しい画面の中で、可愛らしい太郎どんがいろんな意味でヒロイン枠に。
多賀者の再登場に嫌な予感はしましたけど、速攻「ヒロイン枠」を攻撃してくる嫌な流れ。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
実在モデル2人を混合したフィクションキャラで作者に生殺与奪を握られているとはいえ、読者としては太郎どんは無事に成人して欲しいとこです。
表紙を人斬りが飾っているとおり、全体的に舞台の中心が徐々に薩摩から京・大坂に移行し、血生臭い刃傷沙汰、市街での暗闘の色がだいぶ濃くなってきて、今巻中で未来回想的に「泰三子版」新撰組の姿もチラッと描写。
早く描きたくてウズウズしてそう。
相変わらず締まった構成で情報量多く、地味な展開をギャグとエモで情緒豊かに、読み応えのある6巻。

『だんドーン』6巻より(泰三子/講談社)
次巻、史実に残る寺田屋事件。
史実は変えようもありませんが、太郎どんが無事でありますように。
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