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あ、今日読んだ漫画

#ウマ娘 シンデレラグレイ 19巻 評論(ネタバレ注意)

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ『ウマ娘』の派生コミカライズ、「プリティダービー」がつかない『ウマ娘』。

日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、3巻から中央に移籍。

ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ現役時代を通じて魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

タマモクロスが去ったターフで新たなライバルたちとの激闘、題して「第三章 永世三強」編を経て、前々巻から新章にしておそらく最終章、題して「第四章 芦毛の怪物篇」。

史実になぞらえれば残り5戦、残り1年、ラストイヤー。

遅くても2026年、早ければ2025年には完結してしまうんではないかな。

モデルとなったサラブレッドの現役引退、死去に続いて、オグリキャップとの三度目のお別れの時間が刻々と近づいています。

北原がようやく再登場、オグリと相思相愛で念願の再タッグ。

ラストイヤー、第1戦、ヤエノムテキやバンブーメモリーなどの名うての名マイラーたちと鎬を削った安田記念を制したオグリキャップ。

しかし、そのゴールの瞬間、「まるで魔法が解けたような」違和感を覚える。

オグリ自身もレース後も正体をつかめない違和感の瞬間、追い込んで2着に入ったヤエノムテキだけが「それ」を見ていた…

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

身も蓋もなくネタバレするとここから3連敗する「曇らせ展開」。

ラストイヤーの宝塚記念、オグリが負けたのは憶えてたんですけど、勝ち馬をうろ覚えで読んだので、途中まで

「前巻でオグリの違和感を目撃した、ヤエノムテキあたりが勝つんだったっけ?」

と思いながら読んでました。

ので、失礼ながら今巻表紙のウマ娘のミルワカバを「後付け創作の噛ませ犬」ポジションだと思ってました。

もっと言うと、前巻で彼女のオグリへの感情があまりに烈しく重たく、

そして今巻の表紙の彼女の表情があまりに禍々しかったので

「オグリが走れなくなるような妨害行為を行うんじゃないだろうか」

もっと言うと

「オグリに危害を加えるつもりなんじゃないだろうか」

とか心配してしまいました。

自分はこれまでソシャゲ・アニメ・コミカライズと、複数の『ウマ娘』作品に触れてきましたが、馬主の許可をとったIPということもあり、どの作品にもスポーツマンシップは通底していて、悪意・害意に基づいて妨害行為や危害を加えるウマ娘は見たことはなかったんですけど。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

でも『シングレ』って、『ウマ娘』表現のタガを一つ二つ外してしまったような作品なので、モデルなしの架空ウマ娘を使って、初めての悪意・害意が描かれはしないだろうかと。

まあ、杞憂だったんですけどw

ミルワカバ、モデルはオサイチジョージ。

ja.wikipedia.org

おそらく馬主の許可を得なかった(or 得られなかった)んであろう、父がミルジョージ、母がサチノワカバ、両親の名をがっちゃんこした架空名ですね。

モデル馬の戦績を見るに、今後もオグリキャップとの対戦が残されてるっぽいです。

お見それしました、

「害意や悪意をもってオグリに危害を加えるんじゃないか」

とか思ってしまってすみませんでした。

共感できる情念の籠った、いいキャラだ。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

さて。

安田記念のゴール以来、モヤかされてきたオグリの違和感の正体は未だクエスチョン付きですが、どうやら「全盛期の終わり」絡みのようです。

そういえば前巻、結局ヤエノムテキはオグリの何に気づき、ベルノは何に違和感を感じたんでしょうかね。

「『シングレ』は『ウマ娘』のタガを一つ二つ外した」

と前述しました。

自分が思うに一つ目はその表現、「プリティじゃないウマ娘」の描かれ方です。

「プリティじゃないスピンオフの先達」である『リボンの武者』的というか、永井豪的というか。

『ガールズ&パンツァー リボンの武者』11巻より(野上 武志/鈴木 貴昭/KADOKAWA)

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凄惨で怖くて悪魔的にかっこいい、凄みの表現。

二つ目が、「ウマ娘の引退」、「時代の終わり」の描写です。

それまで『ウマ娘』ではソシャゲにしろTVアニメにしろ、故障に対しても不屈、物語のエンディングの後も永遠の青春を走り続けるウマ娘たちの姿が描かれてきました。

競馬ファンの心を慰める優しいIF、ファンタジーである反面、本来は「ニューカマーの登場」や「世代交代」とバーター、セットで語られるべき、主要キャラの「衰え」と「引退」、

「等しくすべてのウマ娘たちに、いつか走れなくなって引退する時が来る、のか?」

という問いから、『ウマ娘』はずっと目を逸らしてきたように思います。

逆に『シングレ』が外さず、ソシャゲやTVアニメが外した三つ目のタガが、「IF展開」「ドリーム展開」です。

エルコンドルパサーがダービーに出走したり、サイレンススズカが悲劇的な事故から復活したり、トウカイテイオーやメジロマックイーンが引退せずに走り続けるような、「優しい嘘」。

さて。

どうなるやら、どう描かれるやら。

『シングレ』はここまで、例えばオグリがダービーに出走するような、タマモクロスが引退せず走り続けるような、「IF展開」「優しい嘘」を吐いてきませんでした。

少女の容姿のまま、不可逆な力の衰えが描かれていく様、「時代の終わり」が描かれる様を想像すると、絵面が少々残酷すぎるような気もします。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』19巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

数多の『ウマ娘』コンテンツの中でも、

「選んでオグリキャップを、IFを排して描く」

ということは、その残酷さを背負う、ということなんでしょうか。

 

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