
そのうち読もうと思っていたら、2巻がもう出てしまうらしいので。
「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の新作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。設定・登場人物は史実ベース。

「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)
鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇の起こした乱の鎮圧に出兵した足利高氏(尊氏)の寝返りにより、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。
北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)
という伝記もの。
主人公の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。
どネタバレですけど実在の人物で、なかなかものすごいキャリアの人物。
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お好きな方には有名な話ですが、歴史を舞台にした作品に、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期は、少なくとも数においては恵まれていません。
数に恵まれていない故に、歴史好きたちのこの時期の歴史上の人物たちに対する馴染みも浅く、故に描かれないという悪循環。
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同じ動乱の時代でありながら戦国時代や幕末に比べると、より昔の話で文献が残っていないことを差し引いても、あんまりスポットが当たってきませんでした。
この時期を描いた作品として最もメジャーな作品は、今なお「太平記」であり、もっとも有名な作品はNHK大河ドラマの太平記だろうと思います。
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自分が子どもだった頃、足利尊氏を主人公にしたこのNHK大河ドラマは放映されまして、自分は「里見八犬伝」以来、俳優の真田広之が好きだったので少し背伸びをして毎週見ていたんですが、ある日曜日、家族で訪れた父方の実家で祖母とともに夕食を囲んだ後、いつものように「太平記」を観ようとTVのチャンネルをNHKに合わせたところ、
「そんな逆賊の話っ!」
つってブチ切れた祖母にTVを消されてしまいました。
祖母は戦前の学校教育を受けた世代でした。土地柄もあるかもしれませんが。
自分は人生で、TVなどのメディアではない生の人間が「逆賊」という言葉を発するのを聞いたのは今のところアレが最初で最後で、大変びっくりしました。逆賊て。
一瞬「あれ…うちのばあちゃん、鎌倉時代生まれとかだったっけ…?」ってなるわ。

娯楽作品として南北朝時代を描くのは戦後も長い間難しく、それ故に南北朝時代を扱った作品は増えてきませんでした。
それを、少年ジャンプでやるっていうねw
足利尊氏が悪役側とはいえ、楽しみですよ、それは。

「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)
自分だったら後醍醐天皇は登場人物として描きませんが、この作品ではどう扱われるでしょうか。
ちなみに、ハードボイルド作家から歴史作家に転身?した北方謙三が一時期、精力的に南北朝時代を題材にした歴史小説を描いていまして、お好きな方にはオススメです。
お好きな方は大体読んじゃってる気もしますが。
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自分はやはり、北畠顕家を主人公にした「破軍の星」が特に好きです。
若き名将、というか若き猛将として描かれた公家の北畠顕家は、おそらくこの「逃げ上手の若君」にも重要人物、おそらく頼もしい味方、もっと言うと主人公の相棒ポジションで登場するんじゃないかと、今から楽しみにしています。
ということで数日後には2巻を読もうと思います。
全然話は変わるんですけど、相変わらず可愛い男の子を描く漫画家やねw

「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)
無理にヒロインを登場させる必要のないこの作者の業は、おっさんだらけになりがちな歴史物の分野にぴったりだな、とw
まあそんなん言いつつ、少年漫画っぽいヒロイン置いてはいますけども。
(選書参考)
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