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#神絵師JKとOL腐女子 4巻 評論(ネタバレ注意)

ピクシブで神BLイラストをアップし続ける神絵師・ミスミに心酔し熱烈な感想コメを寄せ続ける腐女子OL・アイ(26)。神絵師の同人誌コミケデビューにドキドキしてブースを訪れると、神絵師は可愛らしい女子高生(16)・ミスミだった。テンパってよくわからない感じになったアイはミスミに「好きです!」と告げて走り去ってしまう。

という、タイトルどおりBL好きな2人のガールミーツガール百合コメディ。

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「神絵師JKとOL腐女子」4巻より(さと/ヒーローズ)

2人のおつきあいが始まった中、心酔するTVアニメ「アグオカ」の公式コミカライズ漫画のオファーを「自由に描きたい」「オリジナルで勝負したい」と断ったミスミ。

ミスミはプロ漫画家としての道を模索し、アイはそんなミスミを支える決意を新たに。

という前巻を受けて、それぞれの決意を実行するに当たっての葛藤が描かれる4巻。

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「神絵師JKとOL腐女子」4巻より(さと/ヒーローズ)

可愛らしい絵柄にポップな描写で、パッと見は楽しく軽く描かれているようでいて、その実は「創作者とファン(消費者)」「オタクの孤独と邂逅」「感想屋の葛藤」「百合」などのテーマが重層的に重なっていて、その「百合」も親を含めた「世間」向きには「同性愛」「社会人と未成年(高校生)」に二重苦と、見ようによっては重ためとも言える設定。

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「神絵師JKとOL腐女子」4巻より(さと/ヒーローズ)

「社会人と未成年(高校生)」とか「百合」でなんとなくセーフな雰囲気っぽく見えますけど、実際のところそうでもないですしね。

恋愛ものしては障害が適度にあって盛り上げる要素に事欠かないようでいて、「創作者とファン(消費者)」と恋愛感情が重なっているので「ファン心理と思春期の相互作用をお互い"恋愛感情"と錯誤しているだけでは?」という疑念が読んでいてずっとついて回ります。

ということで、それぞれの決意とその葛藤を描きつつ、恋愛要素をちょっと盛り上げに行った4巻。

出オチの楽しそうな設定を、現実に近づけていくためのハードルと、それを超えていくための葛藤と成長。

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「神絵師JKとOL腐女子」4巻より(さと/ヒーローズ)

社会人として、漫画家を志す高校生が「漫画のために高校を辞めたい」とか、両親に「大切な人がいる」とか、処世術としては愚の骨頂で、年上としては常識的にはブレーキ踏んであげないといけないところなんですけど、一方でこういう愚かしい衝動に突き動かされる人間が(自分とは違って)作品を創っていくんだろう、という気もして、年上の百合恋人であるアイのそうした微妙な心の機微が面白く描かれているなと思います。

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「神絵師JKとOL腐女子」4巻より(さと/ヒーローズ)

アイ、ミスミに対してアクセルもブレーキも踏める体勢はとりつつも、ミスミと一緒にアクセルを踏みこむことはあってもブレーキ踏まないんですよね。

「神(創作者)に対する民(消費者)」というアイ自身が語る卑下の陰に「何者にもなれなかった自分如きに才能ある若者のブレーキを踏む権利があろうはずがない」という切実な逡巡と重なっているようで、それと「未成年と相対する年上の社会人」としての葛藤がまた恋愛感情と重なっていて、シンプルだけど結構奥が深いというか、描かれてもいないアイの心理に勝手に「わかるわあ」ってなってしまいますね。