4コマ漫画家・いしいひさいちの、朝日新聞朝刊に長期に渡って連載された4コマ漫画『となりのやまだくん』、途中改題して『ののちゃん』の登場人物の、スピンオフ同人誌として2022年に発刊され話題になった作品。
2023年7月31日に電子書籍(kindle)化されました。
『ののちゃん』のWikipediaの「その他の登場人物」の項に、本作の主人公たちの記載があります。
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吉川ロカ。
高校生。連絡船の海難事故で両親を亡くしている。
学業成績はおもわしくないが、ポルトガル大衆歌謡「ファド」歌手になることを夢見ている。
柴島美乃。
高校生。2回留年してロカの同級生。ロカと同じく連絡船の海難事故で両親を亡くしている。
祖父が営む実家の家業はヤクザ稼業。粗暴な姉御肌で、タイプが異なるロカと気が合い親友となり、ロカの夢を応援している。
ファドはポルトガルの大衆歌謡。
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はてなブログの「iTunes商品紹介」機能で検索すると、ジャンル「ファド」で、ちょうど本作中でも登場した曲「コインブラ」がヒットしました。
Coimbra
- Amália Rodrigues
- ファド
- ¥153
- provided courtesy of iTunes
ブログって便利だな。そうか?
ファド歌手を目指すロカは、高校の音楽の先生から指導を受けつつ、歌う場を求める。
彼女を応援する美乃は、実家のヤクザを使って彼女がストリート、というか商店街の路上で歌う場と安全を確保する。
路上や定休日の定食屋で歌うロカのパフォーマンスは、やがてラジオ局や音楽事務所の目に留まり、やがてロカはデビューのために町を離れるものの、美乃との友情は続く。
ロカはいつも美乃のぶっきらぼうな励ましに勇気づけられる。
パフォーマンスを重ねるロカは世界に見つかっていき、そして…
という、夢を持つ少女のビルドゥングスロマンと、離れても彼女を応援し続ける親友との友情のお話。
4コマのギャグコメディを重ねながら、物語が進んでいき、彼女たちを取り巻く環境の変化が少しづつ語られていきます。
全てが説明されない、巨大な余白を抱えた、すごい終わり方をします。
読後しばらくの間、何があったのか想像しないわけにはいかず、また彼女たちそれぞれの心情に思いを馳せないわけにはいきません。
切ないだけでない、儚いだけでない、故郷どころか前世まで、「越し方」の記憶をすべて思い出してしまって、その「戻れなさ」に泣きたくなるような…
そうか、「サイダージ」とは、こういう気持ちのことをいうのか。
本当に、昔話のような、寓話のような、「サウダージ」な物語。