「あんたの国じゃどうかしらんが
この国では男色は罪になるんだ
不自然な肉欲は風俗を乱すってな」
「…だけど人を愛しただけでしょう?
愛を他人が支配するなんておこがましいと思いませんか
愛はもっと自由なものでしょう?
身分や性別で縛られることの方が不自然です」
1900年(明治33年)の英国が舞台。英国人作家ヴィクターの著作に魅せられて教職を辞して日本から渡英した華子。
ロンドンの出版社に1ヶ月通いつめるも、秘密主義で素性を公開しないヴィクターに取次も、自分が書いた小説を読んでもらうことも叶わず、行くあてもなく途方に暮れてるところを、彼女の熱意に打たれた貴族の令嬢・アリスに声をかけられ、令嬢付きメイドとして働くことに。
アリスは華子に、ヴィクターに会わせる交換条件に自分を殺してほしいと依頼する。
同性愛に対する偏見や差別が今より強かった時代、傷ついた周囲の人間を救うことが叶わなかった同士の2人が、本と思想に情熱を傾けつつ性別や国籍を超えて惹かれあう。
森薫と同じ人種の作者、あとがき標語は「むきだせ性癖!!」。ハイカラさんメイドと英国貴族令嬢の恋を、重たくも活き活きと。「大河ロマン百合」とでもいうか。