「シイちゃんがいるってコトしか
私に実感できるコトってないの」
「だったら だったら…!!
何であたしを置いていった…
せめて一緒に死んでくれって何で言ってくれなかったんだ…!!!」
26歳の営業ウーマン・シイちゃんは昼飯にラーメンを啜ってる最中、テレビのニュースで親友・マリコの転落死を知る。中学時代からいつも顔を痣だらけにしていたマリコの顔を思い浮かべたシイちゃんは、マリコを虐待した遺族のもとへ包丁を振り回して乗り込み、遺骨を奪取。むかし一緒に行くことが叶わなかった海へ、マリコのことを思い出しながら遺骨と一緒に向かう。
作者のデビュー単行本とのことです。
狂騒し七転八倒しながら遺骨を抱きしめて海へ向かうシイちゃんの激しい喜怒哀楽が痛々しい、親しく愛する者を失った者の救済の物語。
女同士で、子ども同士で、どうしてやることもできなかった悔恨と、空回りの使命感と、どこか少し重く面倒くさくも思っていた後ろめたさへの逆ギレ。
「生まれてくるとこ間違えたねってママも言ってた そうだといいな
わたしシイちゃんから生まれたかった
シイちゃんの子どもになりたかったよ」
回想シーンの度に形を変えるマリコの顔の痣が痛々しく、彼女の人生は一体何だったのかと考えると胸が苦しくなるし、毎日ニュースが知らせる誰かの死の裏のそれぞれでこんな風に誰かがのたうち回っていると考えると更に胸が苦しくなる。
「こうしてる間にもどんどんあのコの記憶が薄れてくんだよ
きれいなあのコしか思い出さなくなる…
あたしッ 何度もあのコのことめんどくせー女って…!
思ってたのにさあ…っ」
そういう心に刺さるこというのやめてくれ。
それでもシイちゃんはマリコにとって真っ暗闇の中の一筋の光だったし、あの手紙もシイちゃんにとって一筋の光になるものであってほしいと思うし、自分は今までの人生でこんな風に誰かにとっての光になれていたことがあっただろうか、とも思う。
(選書参考)
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