
カリフォルニア地区で開催されるお祭りの手伝いに駆けつけたエルシーのもとに中央幹事から緊急連絡。散弾銃2丁の盗難事件が発生。調査の結果、迷走兵器による犯行と判明、中央幹事はエルシーに鹵獲ではなく破壊を命じる。
西暦2882年、宇宙への進出と大戦を経て、人類社会の中心地ではなくなった地球。宇宙の片田舎として20世気程度の文化レベルに退行しながら生活を営む人類社会にとって、かつての紛争で投入された自動兵器たちの成れの果て「迷走兵器(ロストボーイ)」が脅威となっていた。
という舞台設定。ヒロインは27世期の月でコンパニオンをやっていたアンドロイド、「LC610C8」、通称・エルシー。
エルシーの今の仕事は地球環境を管理統括する中央幹事・セントラルコーディネーターの指示により、ロストボーイを制圧・破壊する用心棒(バウンサー)稼業。
という、まああらすじ・設定だけ見るとややもすれば陰鬱なハードSFバトルであるかのような設定ですが、いたって牧歌的かつ呑気な作風で実際読んだ印象は「やわらか攻殻機動隊」とでもいうか、「バトルもの」とは程遠いです。あ、フルカラー作品です。1巻につき2話ずつ収録、連続していますが基本的に単話完結でのバウンティハント。
1巻の第1話「バーナクル」が2882年6月5日、2巻の第3話「パラソル」が2882年6月7日なので作中時間は1日1話というところ。呑気に見えるヒロインですが、とても優秀で実はハードワークしています。
ヒロインのエルシーがチャーミングでご陽気でお祭り好きな歌好きで、人間たちと信頼しあってコミュニティに自然に溶け込み、とても楽しそうに過ごしていて、思いのほか癒し系の日常ものです。他のロボット・アンドロイドたちも、戦車型ロボットが畑を耕していたりと、平時は人々の暮らしの中に溶け込んで暮らし、まるで人間とロボットの理想の共存社会のように描かれます。エルシーは特にその傾向が強いんでしょうけども。
バトルを縦軸にした未来SF日常ものとでもいうべき不思議な読み味。絵柄とフルカラーも相まって、翻訳された海外の漫画を読んでるいるような、SF童話の絵本を読んでいるような、不思議な感覚。
ロボットや兵器等のSF考証も唸るものがあり、この巻ではないですがロボットならではの非人間的でかっこいい射撃姿勢には「ほほう…」となりました。
2年に一度ペースの刊行はこの作品らしく欠点にはならないと思いますが、kindle限定の自費出版なのかなコレ、刊行に気付きにくく、奥付を見ると「2020.4.17」とのことなので、出てるのに気づくのに半月かかってしまいました。
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