一昨年WEBで発表され、単行本化されたのも一年以上前の作品で、新作と呼ぶには時間が経ちすぎていますけども。
「突発性多発性染色体変容」、いわゆる「変身病」。
人体が徐々に特定の動植物に変容していき、最終的には人格も失われて完全に動植物化する奇病。
主人公・半田はジャイアントパンダになってしまう変身病だった。病の進行が原因で職を辞した半田は一年後、パンダになりかけの姿で、高校時代の先輩・竹林の、変身病絡みの依頼をこなす探偵事務所で助手として働いている。
という、単話完結型の連作短編というべきでしょうか?
「本能が飛べると言ってる…
もう 思い出も消えてくし」
第一話、街でスリをして暮らす16歳の少女。
「この種のヘビは30年生きます 末は永い…
奥さんこそよほどのもの好きですよ」
第二話、完全にニシキヘビ化した太巻さんの捜索。
「地球一周泳いでようやく分かる
オレはクジにはかなわない」
第三話、五輪金メダルを争う水泳選手の変身病疑惑。
「肉が違う 骨が違う 血ィが違う 心が違う
ホラさっさと逃げんど 全員ころしまっせ」
第四話、動物園で展示される絶滅種・ギガンテウスオオツノシカをめぐる顛末。
「その日ホールに音楽と草はらが生まれアヤさんは指を2本失った」
第五話、植物化が始まったピアノの天才少女のもとに届く脅迫状。
変身病によって人生が変容していく患者たちの事件を通じて、いつかパンダになってしまう自分と引き比べて苦悩する半田。気になるヒキで2巻に続く。
特殊でシュールなシチュエーションにとても切ない情動やセリフをブッこんでくる様は、ちょっと往年の筋肉少女帯の歌詞とか思い出してしまいますね。