「私たちは まったく別の道を
それぞれ行ったよね 行ったんだよね
またここでこんなことしてるなんてね
世界って不思議だね」
いくえみ綾の新作の1巻のタイミングをちょうど捕まえられたので、久しぶりに。
読者歴は、当時つきあってた彼女が読んでたのがきっかけで「I LOVE HER」から入って、「子供の庭」「君の歌がある」「バラ色の明日」あたりは別マ連載のリアルタイム。途中で彼女と別れたので自分で別マ買ってた。ちょっと間が空いて「潔く柔く」を単行本で、という感じ。新刊読むのは10年ぶりぐらい。
園田れみ(39♀)は夫と死別して実家の一軒家で母と娘と3人暮らし。
仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。
不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。
表紙のルックスはマーガレットコミックスですが連載は「ココハナ」とのことで、アラフォーな主人公二人の少女漫画とも恋愛漫画ともつかぬ作品。
少女漫画の最終回の20年後の世界をテーマにしたような、とでもいいますか、作者や読者と一緒に作風もゆっくり歳を重ねた感があります。
セリフのない絵だけでも、絵のないモノローグだけでも、1ページをもたせてしまう、行間で人物の心象を読ませるいくえみ節は健在。
世の多くの漫画家が、流行のテーマ、奇抜な設定、派手なキャラ、わかりやすい話で、いかに読者の目を引くか苦心惨憺する中、相変わらずこんなに地味なテーマに普通の人たちで漫画を回して読ませてしまうのね。ちょっと積んでるエンジンが違うというか。
別マと「I LOVE HER」を「読め、読め」としつこく薦めてきたあの子は、今頃どう暮らしているだろうか。この新刊も買って読んでいたりするんだろうか。
そんなこと、1日2回どころか、この10年で一度も考えたことがなかった。