#AQM

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#望郷太郎 1〜3巻 評論(ネタバレ注意)

面白いらしいと見聞きしたので。「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

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「望郷太郎」1巻より(山田芳裕/講談社)

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

冒頭でガツンと話に引き込むのが上手い、漫画力の高い作者らしい、シンプルながらやっぱり引き込まれる導入。まあポストアポカリプスでサバイバルだとたいてい誰が描いても導入は面白い、ってのはあるんですけど。

元・財閥の御曹司で商社の支社長という主人公、およそサバイバル世界で活躍できそうな資質ではないように見えますが、原始に還った人類が再び集落の形成、農耕と奴隷制の開始、戦争の発明、貨幣経済の発見と、中世に向けて文明の発展を再びなぞり始める過程で、主人公の拝金主義者な経済人としての知見や経験が活かされる、という少々変わり種のサバイバルもの。

山田芳裕流の「金(かね)」をめぐる異世界チートものなんですねコレ。

自然との格闘や人類同士の争いもあり、少々血生臭い描写もしばしば。

描き始めると割りと長くなる傾向のある作者なのでじっくり読んでいきましょう。10年かけて描かれる類の漫画なので、どこまで面白くなるかはよくわかんないね。ポストアポカリプスのサバイバルものは終盤に事故る作品が多いしね…

すでに主人公が移動するごとに徐々に高度化していく新しい人類社会と相対するフェーズなので、いわゆるオーソドックスなサバイバルもののワクワク感とは少し離れ始めてる感じはする。

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「望郷太郎」3巻より(山田芳裕/講談社)

先日出た3巻が割りとキリのいいところなので読みごろな感じ。

日本にたどり着いたら、残してきた娘の子孫、つまり自分の子孫に出会ったりする感じなんかしら。

 

望郷太郎(1) (モーニングコミックス)

望郷太郎(1) (モーニングコミックス)

  • 作者:山田芳裕
  • 発売日: 2019/12/23
  • メディア: Kindle版

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