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#ワールドトリガー 24巻 評論(ネタバレ注意)

三門市に突然開いた異世界からの門。現れた異形の怪獣「近界民」が付近を蹂躙するも、界境防衛機関「ボーダー」を名乗る組織の少年少女たちがこれを撃退。街は近界民の脅威にさらされつつ、ボーダーの能力と信頼によって平和が保たれる奇妙な環境となった。

C級ボーダー(研修生)であることを隠して中学に通う三雲修、彼と出会う奇妙な倫理観の転校生の少年。転校生は出現した近界民を超人的な能力で撃滅し、異世界の人間「近界民」を名乗る。

で始まるジャンプ得意の能力バトルもの。大量の個性的な登場人物に付与された能力を、チームで組み合わせたタクティカルなバトル展開が売り。

長かったB級ランク戦が終わって、作品の縦軸たる近界への遠征、その選抜試験。

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「ワールドトリガー 24巻」より(葦原大介/集英社)

普段のチームからメンバーをシャッフルして行われる試験のまずは一次試験、閉鎖環境試験。それはBランクからの遠征メンバー選抜にとどまらない、審査する側も含めてあらゆる角度から資質が試されるものだった…

閉鎖環境試験自体は今のところ「宇宙兄弟」の序盤でやったアレにSPI試験とグループディスカッションが付いてる、というものです。あれを同時に十数チーム、60人前後が同時にやってるだけ…だけ?

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「ワールドトリガー 24巻」より(葦原大介/集英社)

大量のキャラクター1人1人に細かい人格設定付けされた本作ならでは、という感じはします。

昔あれ田中芳樹だったかな、「銀河英雄伝説」のアニメ化について「一話丸々会議やってるだけの回とか出てくるはずで、アニメ作品として保つのか不安(だが素晴らしい作品にしてもらえた)」的なインタビューだかあとがきだかを読んだ記憶がありますが、本作今巻もまあ言うたらそんな感じです。

基本的にタクティカルなバトル漫画な本作ですけど、会話劇というんですかね。バトルもアクションもなく、セリフが多く、そして長いw

コアなファンしかついてこれない、漫画家志望がジャンプに持ち込んだら確実にNGもらうやつで、こうした作風で多くのコアなファンを既に育てて掴んできた本作ならでは、という感じがします。今巻に限らず、バトル漫画としては異例なくらい、もともと理屈もセリフも多くて長い作品で、特長ですらあるので。

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「ワールドトリガー 24巻」より(葦原大介/集英社)

そうした作品なので、考察や展開予想をしながら読むと、特に昨今のSNSな世の中では大変楽しいんですが、まあ日本中の読者が展開予想をしてネットに書いちゃうもので、予想を当ててしまって作者に対する「展開のネタ潰し」も多々発生していたであろうと思います。

前に公式のなんかで読んだところでは「SNSなどネットでワールドトリガーに関して書かれたものを、編集はネットを見てるけど、作者は見ないようにしている」とのことでしたが。

その意趣返しなのかどうか知りませんが、今巻はAランクメンバーにBランクメンバー中心の受験者を審査・評価・予想させることで、作者から読者に対する「予想のネタ潰し」を仕掛けているかのような描写で、メタを本編の中に取り込んでしまったような、いろいろ興味深いことになってます。

「ワートリの考察・予想が読み物として面白い? じゃあその面白さ、丸ごといただき!」みたいな。考察・展開予想を作者自身が本編中でやっちゃうもんで、考察系のブログで書くことねーw

っていうのと、考察屋の「ネタ潰し」に対するブラフや誘導の煙幕にもなってて、この辺の作者と読者の駆け引きめいたものが生まれててそれがまた面白いですね。

反面、作者の体質からして、作者自身がキャラに予想させた通りの展開を書いても面白くないので、

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「ワールドトリガー 24巻」より(葦原大介/集英社)

神の視点を持っているわけでもないキャラの予想が、必ずしも当たってるわけでもなさそうだったりと、もう作話のハードルが上がってんだか下がってんだかよくわかんねw

アクションもなく、やってること自体は地味なのに、作者がイキイキしとる。

今巻の続きの連載話で水上が物議を醸す行動を取っていますが、アレとは逆に、「本当に1人の人間(作者)が全てのキャラクターの思考や行動を操っているのか?」と思えてくるのがまた面白いですね。

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「ワールドトリガー 24巻」より(葦原大介/集英社)

同時に動かしてるキャラが5〜6人ってレベルじゃないんですけど、キャラが勝手に動いてくれるってレベルじゃねーぞ、どういう脳みそしてんだ、みたいな。

 

 

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