
中学の科学部を舞台に、妄想力豊かだけど照れ屋で素直になれない乙女でヘタレでツインテな上野さんが、キテレツ発明品の実験と称して好きな後輩の男の子の田中くんに合法?的にちょっとエッチなスキンシップを迫って撃沈する、エロギャグ発明ラブコメ。

『上野さんは不器用』10巻より(tugeneko/白泉社)
田中くんはラノベの鈍感主人公を更に100倍ぐらい、ちょっと頭がアレなレベルで鈍感。
基本無口で第三者的に2人を見てるだけだけど、ヤバくなったら止めに入るツッコミ役メガネ女子・山下さん。
徐々にサブキャラ増やしつつも、基本3人で進行、エロギャグだけどエロじゃないサジ加減。
確か作者の初のアニメ化作品で初の二桁巻数、外形的には「出世作」と言っていい漫画なのかな。

『上野さんは不器用』10巻より(tugeneko/白泉社)
8巻からちょっと間が空いて、やっと出たと思ったら9巻&10巻の同時発売、+完結。
前作『彼とカレット』の最終回がそうだったんですけど、前回まで普通の日常コメディだったとこから最終回1話でストンと完結する作風の作家。
ストーリーものじゃなく日常ものってのもあって、盛り上げて終わるでもなく淡々と、割りと無愛想でぶっきらぼうな畳み方をするんですけど、それが逆に「ああ、もう読めなくなるんだな」とちょっと切なく、寂しくなります。
今回は一応、ラスト2話をかけて科学部の「コシカタ」と「ユクスエ」が描かれました。
「ユクスエ」はエピローグ最終回的に「そしてN年後」なんですけど、ネタバレですけど、上野さんと田中くんまったく出てこない上に2人がその後どうなったか全然描かれないんですよね。

『上野さんは不器用』10巻より(tugeneko/白泉社)
薄くフレーバー的に想いが継がれて、今日も科学部の日常は続いている。そんな終わり方。
「3年経ったら全員入れ替わって誰もいなくなってる」、でも何かが受け継がれている、中学・高校らしいエピローグw
「上野さんの田中くんへの不器用なアプローチはこれからも続く」エンドでも終われたと思うんですけど、2人とも卒業させて、しかも描きませんでした。
無愛想というよりは何かこう、「2人のそれからは、彼らの人生でプライバシーですから、自分も知りません」みたいな、キャラに対する作者なりの愛情や敬意なのかな、と思ったりします。こんな赤裸々で恥も外聞もないギャグ漫画をつかまえてプライバシーも何もないですけどw
まるで『上野さんは不器用』ならぬ『tugenekoさんは不器用』みたいな。

『上野さんは不器用』10巻より(tugeneko/白泉社)
2人とも卒業してたら、何かあったはずなんですよ。あるいは、何もなかったはずなんですよ。
でも敢えて描かない、っていう「彼らの日常をほんの少しの間だけ覗かせてもらっていただけ」みたいな、作者の奥ゆかしさというか、最終回ひとつ前の「コシカタ」がこの作者が描くことを自分に許せる精一杯だったんじゃないかな、と思ったり。
中学生の片想いなんて、1クラス40人に1〜2組ぐらいしか成就しないし、上野さんの片想いも高い確率で成就してないですよ。
上野さんと超弩級朴念仁の田中くんがラブラブな様子なんか、想像もつかないですよ。

『上野さんは不器用』10巻より(tugeneko/白泉社)
でも、もしかしたら。っていう。
そしてそれは、誰も知らない。作者も知らない。っていう。
良いですよね。
次回作もどうせまた無愛想でぶっきらぼうな最終回を迎えるんでしょうけど、とても楽しみにしています。
お疲れ様でした。
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