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#ブルーピリオド 13巻 評論(ネタバレ注意)

このバブみ師匠に対する藝大教授陣(助手だけど)の評価というのは作中から見えるんですが、

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

「宗教」が公然とシンプルに悪口として使われててちょっと笑ってしまったw

藝大出身者である高校美術教師(副業)の佐伯先生、おそらく出身者である予備校教師の大葉先生、あと美術史に造詣の深い橋田の、バブみ師匠に対する評価を聞いてみたくありますね。

諸事情あって、既刊13巻を一冊ずつ読んで感想を記事にする余裕がないため、ある程度の区切りごとに記事にしたいなと思って、Wikipediaを薄目でカンニングしたところ、

2022年12月28日時点のWikipedia「ブルーピリオド」の項

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%89 より

 

とのことなので、「高2編」「高3編」「藝大1年生編」「藝大2年生編」単位で読んで記事にしようと思いまして、11巻まで読みました。

残りは既刊2冊、というところまで追いつき、その2冊がいずれも2022年発刊ということで、12巻からは一冊ずつ記事に。

今巻13巻でようやく最新刊に追いつきました。

 

「はてなブログ」は記事日付を遡って記事をアップできまして、「ブログをサボった日」を後から埋めることが可能です。

この記事の日付は11/15ですが、この漫画の発売日は11/22で、自分が読んで記事しているのは12/29と、だいぶ時空が歪んでます。

後付けで「毎日更新のふり」のために時空が歪んじゃいましたが、そういう時系列なのでフライング・ネタバレ・ブログではありません、くれぐれも、念のため。

 

男子高校生・矢口八虎は、金髪ピアスで夜遊びしたりタバコ吸ったりしつつも、将来のために勉学を欠かさず学業成績優秀、コミュ力もばっちりというリア充DQNエリートな万能人間だったが、情熱を注ぐ先を見つけられず、どこか借り物の人生のような空虚さを感じていた。

しかし、ひょんなことから立ち寄った美術室での描きかけの一枚の油絵との出会いが、冷めていた八虎の人生に火を灯すのだった…

という、高2の途中で絵画への情熱に目覚めて藝大を目指す少年のお話。見事に現役で東京藝大の油画科に合格、晴れて藝大生に。

というわけで、自分も好きな作品の多い、漫画の中の一大ジャンル「美大もの」の王様『ブルーピリオド』、前巻12巻から藝大2年生編。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

美術と出会うと同時に受験対策を始めたので成長が目覚ましい反面、「藝大に受かった後なにをするの?」が空っぽで、かつ藝大の教授陣が傲慢で高圧的で観念的で抽象的という、鬱屈した1年生編が終わり、2年生になった八虎は相変わらず鬱屈していた。

そんな彼の前に、ヒッピー的な反権威美術グループ「ノーマークス」、その代表・不二桐緒が現れる。

自分、美術、藝大に対して疑問を感じ自問自答を繰り返していた八虎の心の隙間に、美術と歴史に対する博識とわかりやすい言語化能力、フェミニンで美しい容姿、天然気味でお茶目な性格、一見なんか土下座したらヤらせてくれそう(八虎じゃなくて私の主観です)な雰囲気を持つ不二が埋めるのだった…

というバブみ師匠編。今巻で一旦は決着。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

ちなみにバブみ師匠は本質的に他人に興味がないサイコパスっぽい雰囲気で、実際はたぶん頼んでもヤらせてくれない感じです。

ちょっとなんかあの、美術界隈は知らないですけど、美術界をめぐる思想闘争に主人公が翻弄される話というか、犬飼教授vsバブみ師匠がたまたまそこに居た八虎を挟んで対峙する「スーパーサイコパス大戦」みたいな感じでしたね。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

思想闘争といっても「権威と反権威」以外の思想の中身が描かれないので「権威vs反権威」のガワだけ対立してて、中身のない政治闘争というか権力闘争というかSNSの空中戦みたいというか、「藝大の先生は偉い、なぜなら藝大の先生だからである」という進次郎構文みたいなw 

「ずっとオタク論ばっか語ってる人はオタクじゃなくて『オタク評論家』じゃないのか問題」のように、「ずっと芸術論語ってるだけで作品を創らない人は『芸術家』じゃなくて『芸術評論家』じゃないのか」というか、学生が課題こなす以外、禅問答ばっかりで絵ぇ全然描かねえなこいつらw

一番初心者の八虎が一番モノ考えながらモノ創ってるように見える。そういうポジションなんで当たり前ですけど。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

どこか薄っぺらいスーパーサイコパス大戦は一旦終了したものの、両陣営に対する作者の視線の棘や、コンテストの出来レース指摘など、美術界批判のエッセンスが端々に見えなくもないです。

美大もの漫画って、作者の美大時代・青春時代の懐古要素で美化されるというか、個人の青春・情熱・恋愛・モラトリアムの4点セットで美術界や教育機関としての問題が白く塗りつぶされている(ように見える)作品が多いんですけど。

『ブルーピリオド』13巻より(山口つばさ/講談社)

美術版『ブラックジャックによろしく』みたいになっていくんかしらん。

モーニングじゃなくてアフタヌーンなんで、そうはならんか。

全体的に、実力主義の美大受験を経て正解のない芸術の世界に足を踏み込んで、与えられた「何を創っても良い自由」に主人公も読者も戸惑い続けるインプットの時間が7巻以来ずっと続いていて、その中には主人公の血肉になる意味のあるインプットも、意味のないインプットもあって、「当事者には意味の有無がわからない」ことを描き続けている、という印象。

いま一文中に「続」って3回も書いてもうた。悪文だw

というわけで次巻に続く。

 

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