#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#まくむすび 3巻 評論(ネタバレ注意)

「お前はこんな言葉を鵜呑みにしてやめんのか

 創ることを

 そんな言葉の重みを知らないヤツが書く感想なんかに…」

「(あっそうか…俺はあの時…羨ましかったんだ)」

黒フキダシは立川が昔言われた言葉よね。

高校新入生の咲良はノートで部屋がいっぱいになるほど漫画を書き溜めていたが、幼少期のトラウマで黒歴史になっていた。咲良が手違いで学校に持ってきたノートの1冊が、更に手違いが重なり知らぬところで演劇部の手に渡り、新入生歓迎会で劇として上演されてしまう。自分の創った話が絶賛されるのを面映く思いつつも演劇部に抗議すると、演劇部の答えは思いもしない高校演劇の世界への誘いだった。

演劇ものは青春漫画と好相性な反面、天才女優のサクセスストーリーに偏りがちですが、この作品は趣が違って天才女優も居はするものの、裏方にもスポットを当てて高校演劇が題材。主人公は脚本家の役どころ。

プロの演出家・班目の辛辣な講評と、感想掲示板での多くの好評と「つまらん」の一言が残された大会の終わり。部の存続問題の顛末。

女子高生たちが主役の漫画ですが、自分がおっさんだからか、立川と班目のおっさん…というには少し若いか、大人の男の2人が良いね。

過去に夢が折れた立場の立川が今後何を語るのか楽しみだし、あと特に班目は批評が辛辣なものの端的で小気味よく、彼を登場させた方が明らかに面白いことは今後この作品にずっと付いて回る問題になるかもかもしれないな、と思いました。

私ははてなブックマークで他人様のエントリーにあーだこーだコメントをつけ、ブログで他人様の漫画にあーだこーだ言うのが趣味なので、創作をする人が批評にどう向き合うか、というテーマを興味深く読みました。

天才女優のサクセスストーリーでは、ヒロインの変人ゆえの奇行やメンタルの絶不調由来の大失敗以外の、演技パフォーマンスそのものがネガティブな評価をされることは稀です。創作者と批評の関わりは「エスパー魔美」のパパの言説がネットでも有名ですが、SNSが隆盛し受け手の言葉が創作者に直接届いてしまう昨今、「創作者と批評」というテーマは再び極めて現代的なテーマになっているように思います。

私も漫画の感想をブログに書いてハッシュタグをつけてTwitterに放流していると、漫画家の先生も自身の作品の評判をまったくエゴサしない方、禁止されてる方、いいね!やリツイート、お返事までくださる方もいて十人十色ですし、anond.hatelabo.jp

増田(はてな匿名ダイアリー)の素読みとかしてると、ブックマークコメントに対する恨みつらみの他、稀になんらかの作家と思われる人の吐露も目に入ります。

特にネットで何かを批判することは昔ほど気楽なものでなくなり、諸刃の剣で自身が炎上するリスクも往々にしてありますが、なによりつまらないものに「つまらん」と言葉を投げかけるのは自分の心が荒れて、ここ数年はそれだけで疲れちゃうんですよね。顕名でも匿名でも。自分にとって一文の得にもならないし。歳のせいなんでしょうけども。

なので私は創作者への優しさや気遣いなどではなく自分の為に、つまらない作品は見なかったことにして口を噤んで、面白い作品の話だけをしたいなあ、と思っていて、それはたぶん、つまらないと思ったものをちゃんと「つまらん」と批評することにエネルギーを注ぐことよりずっと不誠実なことなんだろうなと思っています。

主人公たちはプロではなく部活動ですが、当たり前の話ですがやってる身としてはプロとかアマとか関係なく、褒められれば嬉しいし、貶されれば凹むんですよね。私自身、たかが余暇の趣味のブログですが、記事にケチつけられれば腹も立てば凹みもします。

演劇というより創作に関わる人間の心情として、また確固たる自信と信念を備えた天才でもプロでもない、高校の部活の若い彼女たちが、舞台作品への批評に、一般の感想や班目の批評にどう相対していくのか、今後も楽しみにしたいと思います。

 

まくむすび 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

まくむすび 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:保谷伸
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: Kindle版

 

aqm.hatenablog.jp