主要登場人物は4人、全員同じ大学の同学年。
娘の死で壊れた母親のために、亡くなった双子の姉・楓の身代わりを女装して演じて生きる美少年・薫。
薫の幼馴染で、亡くなった楓の面影を女装した薫に見る少年・千三。
男のような言葉、男のような振る舞い、男のような装いのイケメン美少女・千秋。
人気モデルでバイセクシャルで千秋を狙っている美少女・零花。
「男女4人」の大学生の青春もの、ということになろうかと思います。主要キャラ全員がなんらかの秘密を抱え、4人しかいないのに性自認とセクシャリティが複雑に絡み合って、複雑な話になるのかなと思ってたんですが、今巻で完結。
本当は5巻ぐらいかけたかったんじゃないかな、という、風呂敷の拡げ方に比べて少々駆け足な完結巻でしたが、ハッピーエンドと言っていい結末でした。千三が割り食っちゃった感はあります。前回の感想で自分は「自分の幸せを優先する結末であって欲しい」と書きましたが、その希望に沿った結末だったと思います。
にも関わらず、新大阪から博多行きの新幹線に乗ったつもりが東京駅に着いてしまったようなボタンの掛け違い感はあります。
初期設定で時節柄LGBTの恋愛事情の現在に向き合った作品になるのだろう、と思って読み始めた作品でしたが、端的に言うと登場人物たちの主に肉親由来の病的な心因はすべて解消され、全員「ノーマル」で「ヘテロ」なセクシャリティに還っていった結末でした。
作者が描きたい切り口と読者(私)が読みたい切り口が一致しないというのはままあることで、主にこっちの誤読の類なので、まーラストの幸せそうな薫と千秋を見たら文句も言えねえわ。
明日にも自殺しそうだった主人公たちが笑顔で迎えたラストで、よかった。
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