

「戦に酔っているとつい目先の敵を撃滅する事にのみ目がいってしまう
勝っている時は特にそう 冷静になれて幸いでしたな」
「全てが上手く行き過ぎている
致命的な失敗に気付かない時はこういう時だ」
似たようなことを口にしつつ、行動は全く逆を行くのが面白いね。
サラリーマンがリストラ逆恨みで殺されて成仏の際に神に反抗した罰で、近代欧州っぽい異世界、WW1前のドイツそっくりな帝国の魔導師の素質持ちの女児に転生。
戦勝と栄達と安穏な後方勤務を夢見つつ、少佐の階級、エース・オブ・エース「白銀」「ラインの悪魔」の二つ名、第二〇三遊撃航空魔導大隊大隊長として、戦場の空を支配する主人公ターニャ・デグレチャフ11歳。
起死回生の「衝撃と畏怖」作戦によってフランソワ共和国に決定的な打撃を与えた帝国は、勝利を確定させるべく敵国首都・パリースィイに進軍。
ターニャはその防衛の脆弱さ、そしてド・ルーゴ将軍名義で軍港に集結し籠城の構えを見せる共和国軍に、"ダンケルク"、植民地への敵主力の逃亡と亡命政権の樹立、各国の支援による敵の連合化、その果ての"世界大戦"の予兆を見る。
穏便に終戦処理を進めたい軍上層部と対立しつつ、この世界で唯一"世界大戦"を識るターニャに、"ダンケルク"の萌芽は撃滅できるのか。
TVアニメの最終回に相当するエピソード。個人的なことですが、原作・劇場版を未体験の自分が知っている「幼女戦記」はここまでになります。
主人公のターニャと麾下の魔導大隊は一発の銃弾さえ撃たないにも関わらず、とても劇的なエピソード。TVアニメシリーズをここで終わらせたアニメスタッフ陣の構成の慧眼があらためて光ります。
にも関わらず、12話のTVアニメ相当の内容を19巻かけたこのコミカライズの情報量、密度。帝国上層部の判断は決して愚鈍でも慢心していたわけでもなかったその合理性との対照が、当時における"世界大戦"の概念の斬新性とターニャの深い孤独を際立たせる見事な描写。ターニャの血を吐くような、デビルマンのような慟哭。
あのアレ、「何回転生(タイムリープ)しても●●を救えない」やつみたいね。
次巻から、十何巻ぶりだろうか、自分の知らない「幼女戦記」を読めるかと思うと胸が躍ります。(原作読めよ…
aqm.hatenablog.jp