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#イサック 9巻 評論(ネタバレ注意)

「スパイの家」の原作者の、作画担当を替えた現作。大坂夏の陣の終戦後、ヨーロッパに渡ったサムライ傭兵火縄銃スナイパーの戦記もの。

親方の仇を求めて形見の名銃をひっさげて冬王フリードリヒ5世の弟ハインリッヒの軍に従軍してスペイン軍、バイエルン軍と戦う。日本名は猪左久。

前々巻でカタストロフが起こり、主人公一行は散り散りに。

話は変わりますが、「キャプテン翼」の中学全国大会編では、既に中1〜中2で南葛中を全国2連覇させた翼くんが更にドライブシュートを身につけ、盤石の状態で始まります。

翼くんがドライブシュートを撃ち続けていればそれだけで勝てるであろうハイスペックぶりで、故にそれでは漫画にならず、故に作者は翼くんの能力を封じるために慢性的な怪我を負わせました。

スナイパーものも似たようなところがあって、敵の射程圏外から一方的に狙撃できるスナイパーを漫画の主人公に据えて、主人公補性がかかった狙撃精度を備えると無双すぎて基本的に漫画になりません。

故に主人公のスナイパーはハンデを課されるか、遅れて現れます。「ドラゴンボール」の悟空と一緒。

卓越した敵スナイパーを封じるには基本的に
 ①撃てない状況にする
 (戦場外での殺害、負傷、不在、弾薬補給を断つ、
  戦争を終わらせる、その他あらゆる盤外戦術)

 ②同等以上の能力のスナイパーに狙撃させる
 ③隠密行動、もしくは狙撃を掻い潜って接近戦に持ち込む
 ④空爆やミサイル爆撃等、更に超長距離から攻撃する
しか手段がありません。

この漫画では時代背景的に④はあり得ず、③もあまり描かれず、②はロレンツォの存在ですね。で、残った①が作者の執る手段の中心になりますが、基本的に作者が主人公に負わせるハンデの匙加減でその巻のカタルシス量が決まり、それが割りとこの作品の各巻の面白さに直結します。

イサックのコンディションの浮沈に一行の苦楽のアップダウンの波のような繰り返しが従属するんですよね。

今巻、イサックは愛銃を喪っていますが、"代車"の存在でコンディションはまあまあ。散り散りになった仲間も再結集しつつあり、坂を登るなかなか楽しい読み味。

登場キャラのうち貴族に属する歴史上実在のキャラたちの命運は、さらに上位の史実に従属せざるを得ませんが、物語はどのような最期を迎えるでしょうか。

願わくばそれまでに、「GROUNDLESS」3巻「死神の瞳」のような、スナイパーものの醍醐味をもう一度味わいたいものです。あーれは鳥肌もんだった。

 

 

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