

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ「ウマ娘」の派生コミカライズ。
日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。
1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、前巻から中央に移籍。
ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)
モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。
漫画の感想で「大河的」という形容を、自分はよくするな、と思います。「ナンニデモ大河ッテ言エバイイト思ッテル病」。
「NHK大河ドラマ」の「大河」です。「歴史フィクション的」とでもいいますか。
「新撰組」が歴史フィクション化されるとき、近藤勇や土方歳三や沖田総司に何が起こったのか我々の大半は作品開始前から既に知っているんですが、年表に記された史実と史実をつなぐどんなドラマがあったのか、どう解釈され物語化されるのか。
その楽しみが、主に司馬遼太郎以降、「新撰組」を何度となくコンテンツ化させています。
この楽しみ方の歴史は古く、同じ史実を作者や演者を変えて何度もフィクション化して新しい解釈や表現を楽しむ文化の、日本における源流の一つは歌舞伎であろうと思います。
それは置いといて。

「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)
漫画においても歴史フィクションによる再構築は横山光輝の「三国志」をはじめ、最近では「新九郎、奔る!」や「逃げ上手の若君」など、珍しいことではなく、「ファイブスター物語」なんかも架空の歴史をもとにした「大河もの」です。
先日は「化物語」コミカライズの最新刊を読んで「大河」を感じました。
「何が起こるか、読者が最初から知っている」は優れたフィクション作品においてハンデにならず、むしろ作者がどう解釈しどう表現するのかを読者に考察させワクワクさせる余地を生ませる、武器にすらなりうるんですよね。
この漫画も「大河的」な作品の系譜に名を連ねようとしているなあ、と今巻を読んで感じました。

「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)
オグリキャップがいつ勝っていつ負けたかなんてWikipeiaを見れば全部書いてあって、10秒もあれば我々はいつでもその情報にアクセスできるにも関わらず、この作品はこんなにも面白い。
爆発的なスタートダッシュから半年、ソシャゲの「ウマ娘」のブームがひとまず落ち着きつつある今日この頃、10年後、20年後に「ウマ娘」というコンテンツを振り返ったときに、その看板を代表するのはもしかしたらソシャゲではなく、アニメとこのコミカライズになるのかもしれないな、と思ったりします。

「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)
かわいいw
ある程度「if」が許されているコンテンツでもあるようなので、いつ、史実を逸脱するカードを切ってくるかも楽しみ。あえてカードを切らないのも、またヨシですけど。
aqm.hatenablog.jp