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#新九郎、奔る! 9巻 評論(ネタバレ注意)

室町後期(戦国初期)の武将、北条早雲の幼少期からの伝記もの。享年64歳説を採用。

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中世代を舞台にした作品ながら、現代の話し言葉を大胆に採用、横文字もガンガン出てくる。おっさん達の政争劇は作者の本領発揮なイメージ。

北条早雲の伝記を漫画の上手のゆうきまさみが、の時点で面白いに決まってんだけど、日本史の中でも複雑で難解なことで有名な応仁の乱がらみ。渋すぎるテーマをどう捌くのか。

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「新九郎、奔る!」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)

いよいよ、ようやく、ついに、新九郎こと北条早雲が本格的に日本史にその名を刻む、「駿河下向」編の開幕。

新九郎の実姉・伊都の嫁ぎ先・駿河の今川義忠は、幕府が派遣した東軍同士の味方である勢力を「勘違い」して攻め滅ぼし、その渦中で討死した。

後に残されたのは、味方である東軍勢に頭を下げて回りつつ、義忠の後継者を定める茨の道。

伊都が産んだ嫡男・龍王丸(4歳)にはこの難局を乗り切るには荷が重く、駿河今川家は二派に分裂、お家騒動となる。

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「新九郎、奔る!」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)

見兼ねた新九郎はこれを平和裡に調停すべく、駿河下向を志願するのだった…

やー、幼少〜少年期を作者らしく読み応えを持たせながら面白おかしく描いてきたとは言え、作者も読者も地味な展開が続く我慢の時期を乗り越えましたね。

今巻も歴史の華たる戦(いくさ)が直接的に描かれるわけはないんですけど、口舌一つで起こり得る戦争をネゴシエーターとして調停し未然に防ぐ展開は、ある意味「政治家冥利」に尽きる、戦以上の痛快さが期待されます。

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「新九郎、奔る!」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)

って実際は主人公の新九郎本人には割りと苦味が残りましたけど、新九郎の若さと太田道灌の老獪さが駆け引きで火花を散らす交渉劇、「ゆうきまさみ冥利」に尽きる展開。

ちなみにWikipediaによると北条早雲の一連の「駿河下向」と呼ばれるエピソードは、今巻終了までの1476年に始まり、決着がつくのが1487年、実に11年の歳月を要したとされます。まだ終わらんよ!

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「新九郎、奔る!」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)

あと太田道灌のWikipediaを眺めていると、2説あるとされる新九郎の生年のうち、旧説(本作で採用されなかった方)だと新九郎と太田道灌は同い年であったとのことです。

ja.wikipedia.org

 

本作では新説(新九郎が若い方)をベースに描かれたので今回このような「挑む新九郎、迎え撃つ道灌」みたいな展開になりましたが、旧説由来の描かれ方だったらどう話が運んだか、夢想してみるのもまた一興ですね。

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「新九郎、奔る!」9巻より(ゆうきまさみ/小学館)

9巻にしていよいよ話が転がり出し、誠実でお人好しな新九郎の人格にも周辺にも少しずつ「戦国の梟雄」らしさが仄見えてきました。

お楽しみはこれからなのだわ。

 

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