
5歳ぐらいの少女・カナカは他人の心が読めるテレパス持ちで幼少期以来、「家族八景」の七瀬のようにその能力に苦しんできた。

「カナカナ」3巻より(西森博之/小学館)
唯一の理解者だった祖母が亡くなり、親戚をたらい回しにされた挙句にその能力を金儲けに利用しようとする男に引き取られかけたカナカは裸足で逃げ出し、公園で元ヤンの経歴と恐ろしい外見に反して単純バカだが裏表のない綺麗な心を持った男・マサと遭遇する。
マサもまたカナカの遠縁で、またヤンキー体質で頼られたら捨て置けない性格だったこと、カナカ自身が強く望んだことから、カナカはマサに引き取られ、マサが営む居酒屋で暮らすことになった…

「カナカナ」3巻より(西森博之/小学館)
という、西森博之の現作は「テレパス少女もの」+「血の繋がらない父娘もの」。
確かもうドラマ化きまったんでしたっけ。早いね。
コメディ進行の日常回を中心に、散文的というか行き当たりばったりに見える展開ですけど、作劇のプロセスがなかなか読めない作者で、過去作でも行き当たりばったりのようでいて後になって結構計算高く伏線を張っていたことがわかることが多いので、先々の予想がつきません。

「カナカナ」3巻より(西森博之/小学館)
近作では散文的な描写の積み重ねによって独特な情緒を込める作風が特徴で、いつどこでどんな終わり方をするのか全然予想がつかない、メタなスリルがある作家。
この作者のことなので、あと幼い子どもがヒロインということもあって、バッドエンドはないと思うんですが、テレパス少女と心優しい元ヤン男が主人公のこの作品のハッピーエンドはなんだろう?

「カナカナ」3巻より(西森博之/小学館)
と考えてみると、「カナカの超能力 維持 or 喪失」「リアルタイム or 数年後」「生活に 転機がくる or 日々が続く」etc など、切り口ごとのバリエーションの組み合わせで選択肢が結構多い設定なのね、という。
カナカ自身の精神が相当タフにならない限り、心が綺麗なマサみたいな人間としか生活できないですよね。テレパス持ちのままだと。

「カナカナ」3巻より(西森博之/小学館)
いやまあ、最後カナカが幸せになってくれたらなんでもいいんですけど。
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