14歳の少女・一花は祖母の葬式で出会った同じ年頃の金髪のとても美しい少女・アリアに一目で心を奪われる。
アリアは不思議な眼の力で周囲の人間の疑問を霧散させて屋敷に居着き、一花と共に探し物をし、また一花の首筋から血を吸った。
アリアはようやく見つけた探し物、一振りの短剣を鞘から抜いて一花に差し出し、「わたしを殺してくれ。」と依頼する。
吸血鬼×百合というこの上なく耽美なテーマで作品を描いているプロの作家さんに向かって失礼かもしれない話ですけど、この人の描く夏の夜、この人の描く線香花火は本当に美しいね。
前巻でこの漫画にしては割りと大事件が起こって落着して、今巻は民宿の手伝いで夏の海へ。
完全にフラグですやんw
なんか最近、海回・水着回の巻が多いな。偶然でしょうけど。
日常サービス巻かと思ったんですけど、一花を簡単に吸血鬼化できない理由を明示する再びの事件と、再び語られ今後のこの作品のユクスエを暗示する数千年前の追憶。
吸血鬼ものって数はたくさんあるんですけど、吸血鬼にまつわる設定、特に「始祖」にまつわる設定は作品毎に区々なんですけど、この作品は断片的ながら古代ローマ帝国時代まで遡って背景が描写されていることがアドバンテージになって、奥行きというのか厚みというのか、そういう的なアレがすごいアレです。良い。
吸血鬼ものにおいて「人間が吸血鬼化すること」のハードルはこれまた作品十色ですが、アリアが一花の血を吸えばヨシ!だったり一花がアリアの血を飲めばヨシ!では済まないハードルが提示されました。
ハードルは良いものです。
新たなハードルが置かれれば、それを乗り越える意志が物語を生み、選択することがただの選択ではなくなりますから。
前述の奥行きや厚みがもたらす壮大さによって、ちょっと高すぎるハードルに見えなくも無いですが。
あの、壮大で奥行きがある背景を背負う物語は全然ウェルカムというか大好物なんですけど、「宗教的なアレで完結できませんでした」的なやつはやめてくださいねw
aqm.hatenablog.jp