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#葬送のフリーレン 8巻 評論(ネタバレ注意)

80年前、魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

「葬送のフリーレン」8巻より(山田鐘人/アベツカサ)

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士のドワーフも老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。

ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

「葬送のフリーレン」8巻より(山田鐘人/アベツカサ)

フリーレンに、弟子の魔法使いフェルン、戦士のシュタルクを加えた一行は、一級魔法使い試験を経て、危険なため通行が禁止された北部高原へ。

これまでとはレベルが違う強い魔族が蠢く地域には、それでもそこを故郷と定めた人々が住まい、暮らしが営まれていた。

そうした人々と北部高原の街で、滅びた村で、フリーレン一行は出会い、別れる。

「葬送のフリーレン」8巻より(山田鐘人/アベツカサ)

ちょっとハンター試験風だった一級魔法使い試験を抜けて、再びロードムービー風の短〜中編エピソード集のような展開に。

「珠玉の」と称するには、中編エピソードのボリュームが長かったせいでエピソード数にこそやや欠けますが、良エピソード揃い。

強力な敵、強力な味方を交えて結構なバトル展開が繰り広げられますが、フリーレンの興味や執着がそこに置かれないせいで、回想を交えながら相変わらず抑制的に、淡々と、静かに。

「葬送のフリーレン」8巻より(山田鐘人/アベツカサ)

無表情なキャラクターが非常に多いんですが、まるで能面のようにキャラの喜怒哀楽の感情表現が静謐で表面上大きな変化を見せないことによって、却って読者にキャラクターの内心を推し量らせる演出は、初期の2Dドット絵のRPGゲームを思い出させます。

絵的には変化していない同じような顔・同じような表情なのに、ストーリーラインに乗せるとなぜか、泣いていること、怒っていること、喜んでいることが伝わる演出。

「葬送のフリーレン」8巻より(山田鐘人/アベツカサ)

なんだか能面を被った月影先生の『紅天女』を観ているようで、面白いですね。

 

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