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#望郷太郎 7巻 評論(ネタバレ注意)

「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

前巻から、周辺の村々を経済と軍事で支配する大国、マリョウ王国へ。

いま太郎たちがいるはずのハイラルはググると中国のモンゴル自治区で、

ja.wikipedia.org

googleマップで地図検索するとピンが立ってる位置です。

googleマップより

ユーラシア大陸でやることなんで日本なんてまだまだ遠くかと思ってたけど、もうけっこう近いんだな。

周辺地域を支配するマリョウ王国の支配者は、崩御した先代国王の後継・幼いフィッツ王を産んだ国母・ギョン。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

その正体は、太郎の旅仲間・パルの妹、かつてヤープト村で太郎とも面識のあったプリだった。

マリョウ王国では、国王を頂点にした階級社会でありながら、国王から独立した中央銀行、そして国王から独立した議会と選挙、間接民主主義が既に始まっていた…

ということで、旧知ながら国母となったプリを頼って、ヤープト村をマリョウ王国の対等な外交相手に認めさせることが目的…だったはずが、クエスト形式に仕事が増えて膨らんで、気がつけばマリョウ王国の議員に立候補しつつ、紙による金銭(マー)・紙幣の発行に着手することに。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

経済、政治、軍事、ときて宗教も絡んでくることに。

中世〜近代の政治・軍事・経済・科学の発展に対する宗教の影響は良かれ悪しかれ抜きにして語れませんが、現代日本に住んでいるとあんまり宗教を意識することは、その頃(中世〜近代)と比べると少なくなりました。

はずでした。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

が、時節柄、某事件の影響もあって現実の日本社会では「政治と宗教」が非常にホットな話題に。

原始から社会が成熟していく過程を太郎の旅程の重ねて描く作品で、過去巻で「宗教」をテーマにすると予告されていたとおり、予定どおりのプロットで連載されたんじゃないかなと思うんですが、時期を置いて発行された単行本化がどストライクで事件のタイミングにハマってしまいました。

たぶん「カルト宗教の悪弊」を指摘したり風刺したりするために始まったエピソードではないはずで、「作者の慧眼」というよりはもうちょっと歴史上の一般論としての、「テーマの普遍性が歩けば棒に当たってしまった」感はあります。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

順当にいけば、国母・ギョン(プリ)の支持基盤である宗教と紙幣通貨の経済力を背景に劣勢の選挙で逆転勝利、「宗教を味方につけて選挙で勝利」となるんだと思いますが、作者の本来描きたいことが、現実世論の風向きで変な影響を受けないと良いんですが。

 

 

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