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#ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女 下 評論(ネタバレ注意)

強豪・サンダース高校と練習試合で対峙する、全国大会にもエントリーできない弱小校と思われている伯爵高校。3号車「Ⅲ号N型」の車長を任されるのは、卒業していった「魔女先輩」から直々に車長に任命された小檜山 野咲。野咲は練習試合を戦いながら魔女先輩との思い出を回想する。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

よく製作委員会が許したなという、『ガルパン』のスピンオフ。比喩では無く魔女が登場、戦術をタロット占いで決め、敵の所在を魔力で検知、呪詛の演舞を取り入れた波状攻撃。伯爵高校には普通科、農業科と並んで「魔女科」が存在する。

『リボンの武者』とはまた違った意味で異質極まりないスピンオフ。

 

絵の美しさ、少女の可愛らしさでは『ガルパン』スピンオフ随一ですが、激烈に「戦車道」批判が直接的に語られ、ある種の『ガルパン』批評になっている作品。

『リボンの武者』の主人公たちは『ガルパン』「戦車道」に対するアウトサイダーでしたが、この作品は更にメタなアウトサイダーで、主人公の伯爵高校は公式戦に「出場できない」ではなく、あえて「出場しない」道を選び、勝利を目指し頂点を目指す「戦車道」の価値を否定しています。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

『ガルパン』において主人公たちをドライブする動機でもあるものの、「戦車道」の欺瞞、「戦車道連盟」の場当たりと不実は、『ガルパン』本編を真面目にみた視聴者なら多かれ少なかれ感じるところで本編中ですらたまに批判されますが、この作品では更に身も蓋もなく。

アニメ本編は基本的に実質「勝つことですべての難題が解決する」シナリオなんですけど、裏を返すと「負ければ何も得られない」「勝利至上主義」の最たるもので、およそ本来の「道」の理念にも「学生スポーツ」の理念にもそぐわないんですよね。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

このため他の高校と異なり、伯爵高校では「戦車道」は単位科目ではなく、部活動として扱われています。

 

作品を成立させるための「『戦車道』という嘘」というネタにマジレスすると

「『優勝したら廃校なし』てどんな教育でどんな『道』やねん

 ただの『勝てばよかろうなのだ』やないかい」

という。

 

で、この作品の主人公たち伯爵高校はこの勝利至上主義に陥った戦車道を、「道」「学生スポーツ」原理主義的に激烈に否定するアウトサイダーでありながら、まるで「反戦のジレンマ」のように戦車を駆り練習試合でサンダース高校と砲火を交えます。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

そこに既存の「戦車道」とは異なる価値を見出して。

『リボンの武者』と比較するとエンタメとしてエキサイティングな演出・カタルシスに恵まれた作品ではなく、一見すると難解な禅問答のような作品ですが、描かれたことは結構シンプルです。

読み終わってみると、『ガルパン』スピンオフである制約、ルーマニアの魔女をモチーフにした伯爵高校、作者の画力と嗜好、アウトサイダーのモチーフとしての「魔女」、とパズルのピースがピタッとハマってこれしかないように思えてしまいます。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

まるで、誰かが敷いたレールを一番速く走ることよりも個として自分の人生に自分でレールを敷く、彼女たちが戦車で(もしかしたら視聴者が『ガルパン』で)学んだことが、その道標であって欲しい、と願っているかのような。

 

 

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