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#ルリドラゴン 1巻 評論(ネタバレ注意)

女子高生・ルリは、ある朝目覚めると頭から2本のツノが生えていた。

通学前の慌ただしい時間帯にツノに驚く母が言うには、ルリの父親はどうやらドラゴンらしかった。

納得いかないまま登校したルリは、そのツノを周囲にゆるく驚かれつつ普通に授業を受けていたが、くしゃみのついでに意図せず火を吐いてしまい、前の席の男子の後頭部の髪を丸焼きにしてしまう…

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

にも関わらず、周囲はゆるくなんとなく、そんなルリを受け入れているのだった…

という、シンプルな出だしから始まる、不条理変身ものの日常もの。

「ある朝、目覚めると…」の不条理ジャンルで有名なカフカの『変身』では、巨大な毒虫に変身してしまったグレゴールが社会にも家族にも受け入れられない様が描かれましたが、

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

本作ではグレゴールに起こらなかった「異物に対する、社会や家族からの受容」が、緩くて優しい日常もの風味で描かれます。

近年の漫画でも『亜人ちゃんは語りたい』などで描かれたテーマ。

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『変身』が人間の本質を描いた作品だったとしたら、こっちは知性が人間社会を進化させることの希望を描く作品群、とでもいうか。

意図してゆるい雰囲気で描かれ、ツノが生え火を吐くルリを不気味がって怖がるクラスメイトも一部に描かれるものの、未知への怖れよりも子どもらしい好奇心で未知を埋めていくクラスメイトたちの方に概ねフォーカスされる、「優しい世界」中心の話。

ルリ本人も母親もそれぞれにしなやかに強い精神性を持っていて、「人間社会に紛れ込んだドラゴンとのハーフ」の日常がポジティブに描かれます。

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

ある意味、ドラゴンのハーフが存在することよりも、本人や周囲の受容性の高さの方がファンタジーと言える作品ですが、

「もっと人間の陰湿な闇の部分を描くべきだ、それがリアリティだ」

という言葉は、すべての作品に求めることが画一的すぎて、少々お門違いなように思います。

「多様性」「ダイバーシティ」など硬い言葉は既に存在していますが、示唆に富んでこそいるものの、そのコアの柔らかいところを柔らかいままに描写する作品。

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

「柔らかいところを柔らかいままに」描くことが功を奏して、「自分と異なる存在」「未知の存在」を知り交わることの楽しさ・美しさが押し付けがましくもなく読みやすく描かれます。

漫画としても、「日常もの」「異種間交流もの」に加えて、ドラゴン(と母親)にまつわる背景にも深掘りする余地を持って、作者のお手並次第で更にどうとでも面白くできそうな余地を持っていて、

『ルリドラゴン』1巻より(眞藤雅興/集英社)

続巻が楽しみな新作。

 

 

(選書参考)

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