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#亜人ちゃんは語りたい 10巻 評論(ネタバレ注意)

人類社会に低確率で誕生する、バンパイア、雪女、デュラハン、サキュバス、座敷童子などの「亜人(デミ)」がそれぞれの個性を人間社会と折り合い付けながら平和に暮らす世界観の日本。亜人の良き理解者たらんとする高校教師の主人公と、亜人の生徒たちとの語らいを描く青春日常コメディ。

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「亜人ちゃんは語りたい」10巻より(ペトス/講談社)

差別問題を想起させるテーマでありながら、重たくなりすぎないように婉曲に、優しく、コメディタッチに、ポジティブに。

次巻で完結とのことです。

自分は漫画に説教されるのが嫌いです。漫画にはまず第一義的に娯楽であって欲しいと思っています。難しいはずの問題を漫画や喩え話を使ってわかりやすく一刀両断して読者に答えを授けるようなコンテンツをあまり信用する気になれず、描きたい人は好きに描けばよいでしょうが、自分はお金も時間も使いたくありません。善悪や正誤の問題ではなく、趣味人としての私の好悪の問題です。

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「亜人ちゃんは語りたい」10巻より(ペトス/講談社)

この作品は現実には存在しない、吸血鬼、デュラハン、雪女、サキュバスなどの「亜人」と、人間の教師を組み合わせた学校もの・青春ものとして、あらかじめ暗喩として現実社会における差別問題や多様性の在り方について踏み込んだ作品で、一歩間違えば私の「嫌い」の琴線に触れてきそうな作品ですが、最終巻一冊を残した現時点でこの綱渡りを破綻させることなく渡ってきました。

考えさせられるのに押し付けがましくないのはなんでしょね。作者の人徳というものでしょうか。

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「亜人ちゃんは語りたい」10巻より(ペトス/講談社)

ある程度以上の「答え」が出ないことも織り込まれた作品で、今巻の中でも「彼女たち亜人は社会の中でどうなりたいのか」「国や社会は彼女たち亜人とどう相対すべきなのか」「"普通"と同化することが幸せなのか」、問いは描かれても答えが描かれることはありませんでしたが、それは多分この作品の登場人物たちが、そうした問題に対して大上段に構えることなく、性急に答えを求めて思考停止に楽な方に陥ることなく、等身大の個人を幸せにするためにどう在るべきか、何ができるのか、生きている限り考えることをやめなかったことに尽きるだろうと思います。

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「亜人ちゃんは語りたい」10巻より(ペトス/講談社)

むずかしいことは、早く考えることをやめて楽になろうとせず、むずかしいままに。

この作品はフィクションのエンタメで、ある種の理想像で二重の意味でファンタジーだったかもしれませんが、現実社会で誰かが自分とは違う誰かを理解し共に生き幸せを願うにあたって、道標のようなものの一つに、なれる力が有るのかもしれないな、と思ったりします。

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「亜人ちゃんは語りたい」10巻より(ペトス/講談社)

作品を見送るには一年弱ほど気が早いですが、彼と彼女たちの人生に幸多からんことを、そんな最終巻になったらいいなと思います。

 

 

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