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#ブルーピリオド 26〜47筆(7〜11巻) 評論(ネタバレ注意)

諸事情あって、既刊13巻を一冊ずつ読んで感想を記事にする余裕がないため、ある程度の区切りごとに記事にしたいなと思って、Wikipediaを薄目でカンニングしたところ、

2022年12月28日時点のWikipedia「ブルーピリオド」の項

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%89 より

とのことなので、「高2編」「高3編」「藝大1年生編」「藝大2年生編」単位で読んで記事にしようと思います。

男子高校生・矢口八虎は、バレないように仲間と夜遊びをし酒を飲み煙草を吸う不良だったが、人生に対するリアリストで将来のために勉学を欠かさず学業成績優秀、学校のありとあらゆるカースト層の生徒と馴染める人たらしの万能人間だった。

が、情熱を注ぐ先を見つけられず、どこか借り物の人生のような空虚さを感じていた。

『ブルーピリオド』9巻より(山口つばさ/講談社)

美術の時間、美術室にタバコの箱を落としたことに気づいた八虎は、回収に向かった美術室で描きかけの一枚の油絵に出会う。

この出会いが、冷めていた八虎の人生に火を灯すのだった…

という、高2の途中で絵画への情熱に目覚めて藝大を目指す少年のお話。

八虎、見事に現役で東京藝大の油絵科に合格、晴れて藝大生に。

というわけで、自分も好きな作品の多い、漫画の中の一大ジャンル「美大もの」の王様、『ブルーピリオド』の藝大1年生編。

『ブルーピリオド』7巻より(山口つばさ/講談社)

鬱屈した5冊です。

「高3(美大受験)編」は、「美大に合格したい」という目的がはっきりしていて、初心者の八虎が基礎技術を乾いたスポンジのように吸収してメキメキ成長。

大学受験期特有のヒリヒリした空気の中、ボーイ・ミーツ・ディスティニーな青春サクセスストーリーとして十分以上にエンタメでした。

温和ながら天才的なモチベーターの高校美術教師・佐伯先生、具体的でロジカルな言語化による指導が巧みな予備校教師・大葉先生と、人格者で指導力のある師匠にも恵まれていました。

『ブルーピリオド』11巻より(山口つばさ/講談社)

続巻に向けては、

・主人公のモチベが受験に対して合目的的すぎて「藝大に受かって何を描きたいのか、何になりたいのか」がすっぽり抜けている

・藝大合格後に師匠(&解説)ポジションを誰が埋めるのか

の2点が懸念の状態でこの藝大編に入りましたが、その2点の懸念と豪速球で正面衝突した5冊でした。

『ブルーピリオド』7巻より(山口つばさ/講談社)

まー主人公の「藝大に受かった後」の創りたい作品のビジョンが空っぽすぎるのもアレなんですけど、読んでて藝大の教授陣に大変ムカつきますw

主人公も教授陣には普通にムカついているので、作者が意図して描いてるのは明らかなんですけど、まー、「子どもや若者が美術を嫌いになる」原因の大人の見本市みたいなw

『ブルーピリオド』8巻より(山口つばさ/講談社)

教えんの下手すぎないwww

「最高学府の芸術家教育の厳しさとレベルの高さだ」

「主人公の段階が基礎から応用、自分で考え創る、より高次のステップに上がった証だ」

「教授の言葉を受容できないのはまだ主人公(読者)のレベルが低いからだ」

「芸術家を育てるということを、一般社会の尺度で測ってはいけない」

と言うエクスキューズはわかるんですが、態度は傲慢で高圧的で、内容は観念的・抽象的で、コミュ障すぎてなんか笑っちゃうw

『ブルーピリオド』9巻より(山口つばさ/講談社)

「美大もの」漫画では、美大生は自由を謳歌しつつ勝手に作品を創ってることが多く、教員は「いないもの」のように存在感が希薄なことがほとんどなんですが、本作は他の美大漫画では描かれることの少ない教員の描写に「敢えて」スポットを当ててる結果が、この教授陣への反感なのかもしれません。

ぶっちゃけ、描写上は圧が強い割りに講評以外なんもしてないというか、

『ブルーピリオド』10巻より(山口つばさ/講談社)

これ講評か?w

作者はもちろん(?)東京藝大卒なんですけど、後で持ち上げる前に一旦下げてるだけなのか、学生当時にムカついた思い出をストレートに再現してるだけなのか、神格化され権威化されがちな藝大なんて内実はこんなもんよというドキュメンタリズムなのか、ちょっと現段階で判断がつきません。

意図して「読者にムカつかせようとしている」ことだけはわかるんですけどw

『ブルーピリオド』9巻より(山口つばさ/講談社)

SNSで余計なことを喋りすぎたり事件や不祥事が相次いでいることで、現実の大学教授にも芸術家にも、その複合たる美大の教授にも、もっと言うと漫画家にも、一般社会と同じようにたいしたことないのが相当数混じってることは、漫画読者というか一般社会にも割りと周知の事実で、神格的に権威を感じて有り難がってる人とかは身内以外にはもはやあんまいないとは思うんですが。

ja.wikipedia.org

 

ということで、目的見失い中の主人公たち若者(や子ども)が鬱屈する中、彼らを見守り育むべき大人にひたすらムカついた5冊でした。

『ブルーピリオド』7巻より(山口つばさ/講談社)

いい大人が漫画読んでガチめにムカついてて、感情移入して感情揺さぶられて、楽しいねw

個人的に芸術無罪も漫画無罪も、本作ではだいぶ抑えめな美大関係者の幼稚な変人自慢描写も、嫌いなんですよね。

あとは、学祭やってたのと、あと作品を通じた主人公の「ピカソへの理解」の宿題の、中間発表がされたお話でした。

『ブルーピリオド』11巻より(山口つばさ/講談社)

次巻からの2年生編はお久しぶりのキャラも本筋に再び帰ってきて、ちょっと展望ひらける感じかな?

そういえば一瞬「ヒロイン枠なのかな」と思った森先輩がまっっっっったく出てこなかったのと、美大青春ものでよく描かれる「セックスをモチーフにしたエピソード」がないですね、この漫画。なくてもいいし、あってもいい、好みの問題かなと思います。

 

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