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#ゲーミングお嬢様 7巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

ジャンプ+でWEB連載されていた、オマージュやパロディを散りばめ中毒性のある言語センスを伴った、基本ギャグコメディ進行の格闘ゲーム×お嬢様のゲーマー漫画。

格闘ゲームとお嬢様は『ハイスコアガール』といい『対ありでした』といい、なんか相性よろしいですわね。

数ある「格ゲー×お嬢様」作品の中でも最もイカれた世界観設定の作品。

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

わざわざ作画担当を付けているにも関わらず、すごく絵が上手いわけでも美少女が可愛いわけでもないという不合理な建て付けですけど、世界観も話の展開も不合理なので全体として調和が取れているという、ツッコミどころの多いギャグ漫画のような作品。

余談ながら、自分も学生時代に6年間、部活で弓道をやっていて、今巻の弓道描写もやろうと思えば「弓道警察」も可能なんですけど、

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

どこからツッコめばいんだよこんな漫画www

対戦ゲーマーのインナースペースを擦り続けたこの作品のガチ要素、本当に武骨で引き出しも少ないんですけど、「これが描きたいんだ」「これを伝えたいんだ」ってのが強く感じられて結構好きでしたが、同じようなテーマを「全一」「EJO」と擦り続けた後も、もともとB面要素の「ゲーム雑談」の反響が大きかった作品でもあり、敢えての「迷走編」とでも言うべきコンセプトで、連載続行。

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

今巻で完結。

出オチというか読み切り向けというか、「格ゲーマーの汚言をお嬢様言葉に乗せると面白い」というディティールのアイデアで装飾しつつ、作品のテーマとしては「ゲーマーの闘争本能」という一つしかない引き出しを擦り続けた作品。

雑談回も面白かったし、なんだったら「格ゲー回より好評」までありましたけど、本来作者が描きたかったものではないので、「モチベが続かないだろうな」とは。

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

勝手な人w

発見した新たな鉱脈をジャンルとして他の作家と分け合うでもなく、味がしなくなるまで一人でしゃぶり尽くしといてこの言い草w

隆子様を主人公に置いとくことが「描きにくそうだなー」という終盤。

最終的に転子様を中心に作品が展開したように、主人公だったはずの隆子様の天才故のキャラとしての引き出しの少なさが、そのまま作品の引き出しの少なさに繋がったようにも思います。

「強さが言語化できない天才」は、どうしても本番でのパフォーマンス、インプロヴィゼーションの描写がメインになって、かっこいんだけど尺が稼げず、長期連載の少年漫画の主人公にあまり向きません。

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

本作のようなジャンプ的少年漫画の「(格ゲー)分野もの」では、凡人が戦略を練ったり努力したりする過程の描写を通じて分野のうんちくを語ることが特に大ページを持たせる上では重要で、そういう意味で隆子様より転子様の方がジャンプの主人公向きでした。「クソデカ感情」的な意味でも。

最終巻の表紙とはうらはらに、最後は主人公交代というか、「モーツァルトに挑むサリエリの物語」になっちゃいましたけど、英断でした。「作品当初から転子様を主人公に建て付けていれば」と「たられば」を夢想してしまうほどに。

『ゲーミングお嬢様』7巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

あれだけ闘争本能、闘う理由の自分探しを深掘りしといて、最後は失笑で締める、とてもこの作品らしいクライマックス。

コメディ路線を模索して長続きしなかったのは残念ですけど、この作品らしくなく長続きするより、この作品らしく終わって良かったな、と思います。出オチの一発ネタのようでいて、芯の熱さとテンションの高さで7巻もよく保たせたな、と。

出てきたときのインパクト凄かったもんな。

この作品のカラーが一過性のブームで終わりにならずに、「『ゲーミングお嬢様』はなぜあんなに面白かったのか」、よくよく分解して分析してエッセンスを継ぐ漫画が現れて欲しいなと思います。

最後のセリフが「クソわよ」なのがまた、良いですよね。

 

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