神原正子、40歳、独身、職業漫画家。賃貸の一軒家に5つ下で世話役アシスタントを務める妹と二人暮らし。
少女漫画家を志してデビューしたものの、23歳の時に少女漫画とは畑違いのゆるキャラコメディもの?の『ファブ郎』がヒットし、以来『ファブ郎』を長期連載。
プロとして食っていける分には収入も生活も安定し、『ファブ郎』も出版社の漫画賞を受賞するなど、順風満帆とまではいかないものの漫画家として悪くないキャリアだった。
が、自身の40歳到達と、妹の結婚を機に一人暮らしとなるタイミングが重なったのを機に、若かりし頃の夢「少女漫画が描きたい」という情熱に再び取り憑かれる。
『ファブ郎』の連載と並行して、デビュー当時の少女漫画誌に新作少女漫画のネームを送るも、どうにもハマらない。
どうやら正子には、少女漫画家として「キラキラ」のインプットが足りないようだ、との認識が自他共に一致し、かくして正子は「キラキラ」をインプットすべく、「恋活」を開始するのだった…
という、少女漫画の大家・いくえみ綾による漫画家漫画。
3巻の発売日なので3冊イッキ読みして感想を書こうと思ったんですが、面白い上に情緒の情報密度が1冊ずつ記事にすることにしました。
カフェで美少年大学生・廉と、そして漫画賞の授賞式でドラマ制作を手掛けるバツイチイケメン・鷹野と知遇を得た正子。彼らは親子だった。
廉も遠巻きに応援する中、正子は鷹野といい感じの仲になりつつあったが…
と、未だ未満恋愛気味ながら、恋愛漫画っぽく。
この感覚の、この表現なあ…
が、それとは別ルート、担当編集から猫の飼育を押し付けられたことが契機で、「それ」が正子に降りてきた…
ユニコーンと奥田民生の大ファンだった作者になぞらえて一言で言うと、令和の「ヒゲとボイン」は、若い女性編集者とバツイチイケメンの姿をしている、という2巻。
恋愛要素も順調ながらやや不穏な兆候も。
一見「仕事と恋の両立」という古典的なテーマのようで、周囲に配慮できなくなるから「夢中」というわけで、「天才が捨てた恋」か「仕事も恋も両獲り」かのどちらかに落ち着きがちなテーマではあるんですけど、主人公が中年女性漫画家で、作者がいくえみ綾であることが事をややこしくして先行きを予想し難くしています。
作者が必ずしもパターナリズムにハマらないことを期待させる作家で、そして読んでるこっちも「作家には情熱と才能とチャンスに従って欲しい」と、漫画読者としては無責任に願ってしまう。
赤の他人で、ましてやフィクションなので。
でもこの、正子の「降りてきた」高揚感、良いですよね。
aqm.hatenablog.jp
aqm.hatenablog.jp