オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な「ACCA」世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。
リコ、ラズ、ハート、エルモの4人の男は、それぞれ犯した罪でヤッカラの刑務所に収監されていたが、国王代替わりの恩赦・減刑で刑期が明け、4人で煙草店を営むべく揃ってバードンへ。前科持ちのハンデを抱えつつ煙草店を開業。
「二度と悪事にもサツにも関わらない人生」
を夢見る男たちの商売繁盛記にはならず、良かれ悪しかれ罪を犯した過去がつきまとうハードボイルド風味。
既刊に続き、単巻で中編を1エピソード。読後感が良く、一冊の満足度がとても高い。
…という感じで巻を重ねて今巻で通算7冊目。
タバコ店「プリミエラ」に持ち込まれた新たな厄介ごとは、ヤッカラからバードンに船で密航してきたギャングの少年。
マフィア組織「ユーカー」の構成員・ジャコモは、配下のギャング組織から抜けたがっている少年をサメのエサにする代わりに、組織を抜けたハートに少年を目立たぬように匿うよう依頼。
しかし少年のバードンへの密航には「ある目的」があり、隠れ家となる「プリミエラ」のアパートにジッとしているわけにはいかない事情があった。
少年の義理と正義感と仄かな恋情から始まった無鉄砲は、バードンを舞台にヤッカラ系マフィア組織や警察の間のバランスに、思いがけない緊張をもたらす。
マフィア組織の構成員として今も生きるジャコモ、マフィア組織を抜けてやり直しているハート。
裏社会から手を切って平穏に暮らしたい、「厄介ごと」には関わりたくない「はず」のプリミエラの面々やその隣人たちだが…
作品の構造としては、社会の「表」と「裏」があるとして、プリミエラはその境界線上に浮かんでいます。
彼らが賢く「裏」と一切の関わりを拒絶すれば、平穏に暮らせる代わりに漫画にならないので、作者があの手この手で、それでも彼らが「裏」に関わらないわけにはいかない理由を創る、そのことがドラマを生んでいる作品。
ことあるごとに彼らは境界線上から裏に向かって、ある時は足を一歩踏み出し、ある時は手を差し伸べます。
今巻は「裏」から「表」へ一歩踏み出そうとしている少年。
お人よしで気のいい、自らも「裏」から「表」へ一歩踏み出したプリミエラの連中が、少年に向かって境界線上から手を伸ばすのはもう、必然と言ってもいいぐらいですが、「裏」の側からそれぞれの立場なりに少しずつ少年を押し上げようとする連中が居ることが、また良いですよね。
自分の失敗や後悔を踏まえて、若者に向かって
「お前は俺のようになるな」
とお約束のセリフで背中を押してやるのは、「表」とか「裏」とか立場とかを問わず、強く優しく在るべき大人の、ハードボイルドの美学なのかな、と。
※間違った例。
b.hatena.ne.jp
今更ですけど、「またな」ってのは、
いい言葉ですね。
aqm.hatenablog.jp