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#東京入星管理局 4巻 評論(ネタバレ注意)

作者の名前でググると見当たるとおり、業の深い嗜好への強い執着が見られる作家です。

商業作品を描くにあたってがんばって癖(へき)を薄めてはいますが、ハートにバリアをかけながら読まないと、影響を受けてこっちの性癖が変わってしまいそうで警戒してしまうw

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

銀河の端、連邦の末端である地球には、常に連邦法に違反した宇宙人が入星していて、女子高生のラインとアンは入星管理局の局員として違法入星した宇宙人を日々取り締まっている。

あらすじ見るとJKバトル版「メン・イン・ブラック」、もしくはSF版「逮捕しちゃうぞ」、自分は1巻を読んで「士郎正宗の正統後継のような漫画だ」と思いました。1冊読むのに3時間かけるぐらいのつもりで気合い入れて読みましょう!

と、思ってたんですが、初見が難解だった1巻を何度も何度も熟読したせいか、「攻殻機動隊SAC」のスタンドアローン・エピソードのように比較的短いエピソード群だったためか、2巻、3巻、そして4巻はだいぶすんなり読めて普通に楽しめました。

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

高度に発達した、というより宇宙から持ち込まれた科学は魔法と見分けがつかないんだけど、原理を解析し理解し再現を試みるところに科学の意義があるが、時に人倫を踏み外す。

情報量が多いので一見難解な漫画のように見えますが、むやみに難解さで煙に巻いてカッコつけようとしてる漫画ではなく、むしろ商業作品であることを意識して丁寧に読めば理解できるように、だいぶ歩み寄ってわかりやすくしてくれてる感があります。

省略の美、説明不足の美が生み出すテンポの良さやプロっぽいカッコ良さ、察する快感は相変わらずなんですが。

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

第1エピソード、ロカビリーなルックスの異星国家の王子、地球来訪の目的は「政略結婚の前に、一目惚れの相手に会いたい」だった。その想定外すぎる顛末。

第2エピソード、「運・不運定量論者」の女を襲った悲劇、理不尽で残酷な人体実験事件、その顛末。

SF漫画を通じて私(読者)の「想像力の蓋」をパンドラの箱のように開けてしまった漫画家というのがいて、手塚治虫・石ノ森章太郎・松本零士・藤子不二雄・士郎政宗などがそうです。

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

彼ら先人たちの作品を全て読んだわけではないので「彼らによって既に描かれていることかもしれない」という留保付きで、この作家はその系譜の何人目かの「蓋を開けた漫画家」という感じ。

自分が考えたことのない、存在を知らなかったSF概念をベースにエピソードが疾走し、読んでて自分の頭の未だ使ったことのないシナプスが繋がっていく感覚。

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

その代わり、ベンチマーク・比較対象になる似た作品がない!w

ポップながらもハードでどこか「前例のある売れ線要素」から逸脱している分、『ガンダム』が再放送で評価されたように社会に理解・評価されるのに時間がかかったり、あるいは作者が生きてる間にはされない作品なのかもしれない、と、たぶん過剰な選民意識じゃないところで、少し思ったり。

「商業化され出版されてる時点で評価されている」と言われれば、それはまあそうなんですが。

萌えキャラを指してこういう指摘がありますが、

『ぶんぶくたぬきのティーパーティ』4巻より(森長あやみ/まんだらけ)

「地獄に咲いた花」のように美しい作品、というお話はありますが、本作は商業漫画において未知のSF概念と、理不尽で残酷でハードな想像からだけ生まれるドラマ、

「人倫の禁忌の血と毒の沼で、宇宙の未知の種から咲いた美しい花」

と形容したくなります。

面白い代わりに業が深い話なんですけど、先に名前をあげた偉大な先人たちも、性的嗜好も含めて業の深い性癖だったよな、という。

『東京入星管理局』4巻より(窓口基/ジーオーティー)

人体実験、人体改造、カニバリズムなど、彼らも描いていて、そこからしか描き得ないドラマが確かに在ったもんね。

 

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