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#ハイパーインフレーション 5巻 評論(ネタバレ注意)

表紙、パッと見、エロ漫画ですやん。

しかもよくよく見てみたら、おっさん2人が飛び蹴りしててもう何の漫画かわからんわw

架空の帝国・ヴィクトリア帝国でマスケット銃や帆船、紙幣などが用いられる程度に中世から近代に移行しつつある世界。

ヴィクトリア帝国の辺境の植民地、帝国に迫害されながら暮らす少数民族・ガブール人。

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

奴隷商人・グレシャムの暗躍により、ガブール人の巫女の少女・ハルは捕えられ、その弟・ルークをはじめとするガブール人たちも虜囚となった。

極限状態となったルークは精神世界でガブールの神と邂逅し、生殖能力と引き換えに願いに応じた特殊能力を授けられる。

ルークに授けられた能力は「身体から1万ベルク帝国紙幣を無限に湧き出させる」能力、ただし紙幣の通し番号は全て同一の偽札だった。

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

偽札無限湧き能力を活かしながら、ルークは帝国に対する反乱と姉の身柄の奪還を決意する…

迫害される少数民族の能力持ちの少年が、攫われた姉の身柄と自由を求め、銭ゲバ大商人や帝国情報部スパイを向こうに回して、駆け引き・裏切り・騙し合いの頭脳戦を繰り広げる…なに?これのジャンルなにw 「頭脳バトル」「経済バトル」「情報バトル」的な。

絵ヅラも展開も一見は荒削りながら、ルークの敵を出し抜く駆け引きや、役割を予見して注意深く配置されたキャラクターなど、読むと割りとすぐプロットの緻密さに気づきます。

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

主人公の少年・ルークの「同じ通し番号の精巧な偽札を身体から無限湧きさせられる能力」も、シンプルながら癖が強くて決して万能ではないんですけど、それを補う頭脳戦・駆け引きが見どころ、という感じ。

辺境の植民地(1巻)→奴隷船での移動(2巻)と舞台を移して、3巻から帝国本土が舞台に。

ルーク一党が資金と拠点を経て、ルークの能力で生み出す偽札「ハイパーノート」の試金石として、偽札造りの「プロジェクトX」展開。

予定より早く準備が整い、「ハイパーノート砲」を帝国全土にぶっ放す最終準備が完了、帝国中枢との交渉に臨むのみ!

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

というタイミングで、少数精鋭となったレジャット率いる部隊が、「待て〜ルパ〜ン!!」とばかりにアジトの城を強襲。

雨の古城、例によってグレシャムが裏切り、ガブール人・用心棒・帝国エージェント部隊・グレシャムの伏兵の各勢力が裏切ったり手を結んだりしながらの混迷を極める激戦。

ルークは無事に城を脱出できるのか、仲間たちは…という、作品のクライマックス。

ルーク、グレシャムに比べて、レジャットの動機が「職務熱心」だけなのはずっと気になってたんですけど、

「まあジェームズ・ボンドも職務熱心で動いてるし、スパイってそんなもんなんかな…」

と流してたんですけど、なんか来ましたね。それでこそ。

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

暴力は本作の本領ではない証拠に、12歳の子どもに過ぎない主人公ルークは体調不良もあって影が薄く、グレシャムとレジャット配下の武闘派キャラたちが本領を発揮。

ルーク一党でほぼ唯一にして最強の武闘派・ダウーはしかし、言葉を覚えて人の心を知ったことで、暴力の持つ罪を自覚し始めていた…

それぞれのキャラの生き様のコアが露出する激しく熱い展開ながら、もういろんなキャラに死亡フラグ立ちまくり。

作者はそれすら逆手にとってギャグまでかますなど、混迷・混迷・また混迷。

残すは最終6巻のみ、いよいよ大詰め。

ルークの悲願もさることながら、

『ハイパーインフレーション』5巻より(住吉九/集英社)

ダウー、『ガンダム』だったら絶対死んじゃうぐらいフラグ立ってるけど、最後まで生き残って欲しいな…

 

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