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#わざと見せてる? 加茂井さん。 9巻 評論(ネタバレ注意)

実録ガチ系の下ネタ・風俗ネタ・ドMネタ、お下劣でやたら面白い怪作 、「エムさん。」の作者。無駄に女の子が可愛く「ヒロイン立ててストーリーもの描いてくんないかな」と思ってたら、カースト「下の中」の漫画オタクの男子中学生と、カースト上位でスカート短い美少女ギャルの、王道の隣の席ラブコメ。やったぜ!

作品としては「中学生の未満恋愛」の同じセグメントに『僕の心のヤバイやつ』という超強力な作品があって、その陰に隠れている感じはあります。開始時期も同時期で巻数も近く、また作者がラブコメ畑の外から参入してきたあたりも似ていて、桜井のりおとはまた違った意味で従来のラブコメにない切り口や視点が提示されて、自分もとても期待している作品。

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

『僕ヤバ』と比べるとヒロインをもうちょいエッチに、主人公をもうちょいキモくした感じです。

陰キャな青春を過ごした作者が陰キャな少年を主人公に飛び切りの美少女との恋愛未満を妄想で付け加えて描くという、外形的に大きな共通点があるんですけど、それ以上に「あー、青春時代の後悔をずっと大切に抱えている作者なんだな」と強く感じて、だからこそ同じように後悔を抱えている自分はこの作品にも惹かれるんだろうなー、と思います。

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

陰キャな青春に妄想上のヒロインを放り込んでもフィクションでやり直しても、後悔は形を変えただけで結局存在していることは変わらない、苦い何か。ルックス的には一見して「売らんかな」なラブコメでありながら、どこか「ラブコメの勝利の方程式」に背を向けちゃってる漫画。

ラブコメと呼ぶにはラブ要素と鬱展開の高低差が激しく、またラブコメのテンプレにハマってるようでハマってない作品。

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

男性向けの恋愛もの漫画・ラブコメ漫画の一つの型として、「高嶺の花」にヒロインに惚れた、取り柄の少ない男主人公が、「彼女にふさわしい男になる」と努力して成長する物語、という型が昔からあります。

近年…なのかなあ、ごく稀に、男主人公が悩んで苦しんで学んで成長した結果、

『僕らはみんな河合荘』9巻より(宮原るり/少年画報社)

『僕らはみんな河合荘』9巻より(宮原るり/少年画報社)

主人公とヒロインの関係における「高嶺の花」ポジションが逆転してしまうことがあって面白いなあ、と。

『河合荘』はまだ「対等になった」ぐらいでしたけど、作品によっては人間的に成長した男主人公に対して、ヒロインが「可愛いだけのヒロイン」に見えてしまうフェースがきてしまうというか。

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

10代のうちは自分を識り自分を確立していく過程で、スポーツマンだオタクだ、イケメンだ美少女だブサメンだブスだ、陽キャだ陰キャだ、リア充だぼっちだ、といわゆる「スクールカースト」上位だ下位だといろいろあります。

別に10代に限らんか、大人になってもたいして変わらんか。

思うに、それらの重要だけどくだらない「背比べ」を超越できるパスポートってのがあって、

「確固たる自分の目標・夢、自分の人生が既にあって、それに向かって既に具体的に始めてる奴」

ってのは、誰も勝てないんですよね。

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

もう「背比べ」より上のレイヤに行っちゃってるというか、「自分を識り自分を確立」してしまって、「勝った負けた」の土俵にそもそも居ないので。

この「高嶺の花」の捻れ現象は、「可愛い」以外の武器を持たされていない加茂井さん、しんどいなコレ。

「作品やキャラがどうなるんだろう」というよりは「作者がどうするつもりんだろう」とい青春シリアス展開のまま、次巻は10巻ですが、

『わざと見せてる? 加茂井さん。』9巻より(エム。/双葉社)

おそらく作者自身のキャリアハイ、二桁到達の10巻の、あとがきも楽しみですねw

まあそうなる匂いはしていたとはいえ、1巻の頃を思い出すと、エロラブコメからシリアス青春ものの振れ幅すげえよなw

 

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