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#望郷太郎 9巻 評論(ネタバレ注意)

「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

しかし太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

周辺の村々を経済と軍事で支配する大国、マリョウ王国へ。

作品の大目的は日本に帰還して、残してきた娘の消息を探すことだったと思いますし、地理的には日本にだいぶ近づいてきているんですが、モンゴル自治区のハイラルやフルンボイル(作中ではマリョウ王国)で、足止めというかなんというか。

マリョウ王国では、国王を頂点にした階級社会でありながら、国王から独立した中央銀行、そして国王から独立した議会と選挙、間接民主主義が既に始まっていた…

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

ということで、旧知ながら国母となったプリを頼って、ヤープト村をマリョウ王国の対等な外交相手に認めさせることが目的…だったはずが、クエスト形式に仕事が増えて膨らんで、気がつけばマリョウ王国の議員に立候補しつつ、紙による金銭(マー)・紙幣の発行に着手、経済、政治、軍事、ときて宗教も絡んでくることに。

引き続き選挙活動、それ以上に紙幣の普及活動と、既得権益を持つ対抗勢力との暗闘。

マーとは、通貨とは、カネとは一体何なのか。

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

太郎の言うとおり便利さには抗えないので(太郎の生死はともかく)最終的に紙幣の普及は成功するのは見えてるんですけど、その主導権争いにフェーズが移行した、というところ。

という、マリョウ王国を舞台にがっつりと権力闘争が繰り広げられますが、闘争の戦線が多方面に拡大して、複雑ではないにしても複線で同時進行、終盤で絡み合ってきそうというかどう考えても絡み合う感じ。

・選挙戦

・戦車戦

・紙幣発行権の争奪戦

の3軸に、それぞれのキャラクターの思惑が絡んで、というところ。

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

太郎の切り札も当初は「人類社会最盛期の知識」「マーの原石」「盟友・パルの武勇」だったのが、その後の「紙幣発行」に加えて今巻でとうとう「ガソリンの精製」「ガソリンエンジンの復活」とずいぶん増えましたが、それらを総動員しての多方面での総力戦。

相変わらず目先の「続きが気になる」で引っ張りつつも、今巻では更に、マリョウ王国の「外国の介入」の可能性も示唆されました。

太郎の旅の進行方向的には、「外国」が日本である可能性が結構あるなあ、と。

『望郷太郎』9巻より(山田芳裕/講談社)

日本が現在どうなっているのか、ここまであまり描かれないですよね。

とりあえず、パルがチェーンソーで無双するとこが見たいっスねw

 

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