石黒正数のストーリーもの、ポストアポカリプス、AKIRAっぽくもあり、寄生獣っぽくもあり。シリアスでハードでミステリーでグロテスク。
2本立てでストーリーが進展してて、
①学園パート
「学園」と呼ばれる高度に科学化され閉鎖された環境で、職員達に観察されながら「外」の知識を欠落しながら平穏に暮らす少年少女達の生活
②サバイバルパート
2024年11月の大崩壊、の15年後の世界で正体不明の「天国」を探して旅する少年マルとボディーガードの少女キルコのロードムービー
が交わらずに並行して進行、していたものが近刊でようやく交わりだして、ここからが作品の本領、というところ。
便宜上、「ミステリー・サスペンス」というカテゴリタグをこの作品にも付けているんですが、その筋の人と話をしたところ、厳密にはミステリーと呼べる漫画作品は数えるほどしかなく、多くの漫画はミステリーにはあたらないとのことで、この作品がどうなのかわかりませんが、便宜上ここでは「ミステリー風」としましょうか。
日本医師会から抗議が来そうなコマだなwww
回収されていない伏線は機能をまだ半分しか果たしていない、とでもいうか、自分からするとパズルのピースが揃っていない状態で推理を強制させられるようなイライラする展開が続いていたんですが、「学園パート」に大崩壊の一旦と思わしきイベントが起こり「ここから15年後がサバイバルパート」と言う前提でアタリをつけると、ようやくパズルの全体像、仮説めいたものが。
サバイバルパートにおける「誰」もしくは「どれ」が学園パートの「誰」だったのか。
前々巻ぐらいからは、同じルックス(成長前/成長後)や同じ名前で②と①両方に登場するキャラも居て、断絶していた②と①が「シームレスに接続」され始めました。
今巻の見どころはマルvsミチカの肉体言語の応酬を通じて悪役然としていたミチカについての理解が深まったことと、キルコを手術した医者との再会で情報が小出しに増えたこと。
その他、作者が好きな時系列を入れ替えてシャッフルした描写を交えて、と言う感じ。
「考察勢の読者に見つけてもらう」
ことが前提の展開や描写ですけど、セールスの大半を占める「普通の読者」にとっての漫画の面白さにどれだけ寄与しているのかな、とは思います。
「普通の読者」である自分は面白く読んではいますが、謎が多すぎる上に時系列の転倒も複雑なので、もう
「完結してから通読してどこかの『コアなファン』による考察サイトを読めばいいや」
と割り切って、作者が仕掛ける謎かけやギミックを自分で体系的・網羅的に精読して考えること、自分が「コアなファン」でいることに労力を払うことについては、匙を投げました。
『それ町』のころは「嬉しいおまけ」だった隠しギミックが、本作では作品の本質を楽しむ上で「読み解き必須」になっている感じはしますね。
この辺はもう「作風」や「個性」と呼ぶべき領域かなと思いますが、自分のように「正直ちょっと自分には合わないな」と思ってる読者をも惹きつけ続けてしまう、少し困った作品ですw
「真価がわかるのは完結して情報が出揃った時」になる作品だろうと思いますが、1巻の時点で「このマンガがすごい!」1位でした。
まだ完結してこそいないものの、その頃より「点と点が繋がって線に」なって情報量が増えて、明らかに面白く「すご」くなっている今年は、いったい何位を獲るんでしょうか。楽しみですね。
aqm.hatenablog.jp