#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#映像研には手を出すな! 8巻 評論(ネタバレ注意)

人見知りで空想癖な妄想屋で監督肌のタヌキ顔のチビ・朝倉。

銭ゲバ風なリアリストなネゴシエーターでプロデューサー肌のノッポ・金森。

と、

財閥令嬢で役者の両親の娘で有名読モでキャラデザ・動画肌の美人・水崎。

の、高校入学でのガール&ガール・ミーツ・ガールで立ち上げた映像研を舞台にしたクリエイター青春グラフィティ。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

作品を高校生アニメのコンテストに出展することになった映像研。

しかし審査員たちはその描写に注文をつけ、また取材するマスコミはありきたりの「青春版プロジェクトX」としての撮れ高を期待する。

生徒会などとの闘争はありつつも、基本的に「自分(たち)の内心」と闘うクリエイターものとして描かれてきた印象がある作品ですが、今巻は珍しく外部との「あるべき表現」をめぐる闘争。

行き着くところは「外圧に折れるか、折れないか」の、要するに「自分の内心」との闘争に帰着はするんですけど、形として外部との争いが描写される分、いつにも増してエキサイティングな展開、描写。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

専門家の方に怒られてしまいますが、記事にこんなタイトルをつけていながら、

自分は「評論」、「批評」、「感想」の定義や境目に割りと無頓着で、本当はどれでもいいと思っています。

漫画を読んで思ったことを書くだけの、要するに「感想」が実態に一番近いんだろうな、と自分でも思うし、たかが私的な感想に「評論」などという大仰なタイトルをつけていることを面映くも思っているんですが、さりとて法律で

「評論とはこれこれこのように書かねばならない」

と定められているものでもなし、名乗ったもん勝ちだろうとも。

実質は、いわゆる「ネタバレサイト」と混同されないための法務対策というか、法務の人や弁護士の人に、

「む、このサイトは『評論』を謳っているぞ」

と初見で思ってもらうのには、「感想」よりは「評論」の看板の方が良いだろうと。

「感想」を謳うネタバレサイトも少なくないですが、彼らも「評論」は名乗りにくかろうし、。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

んで「評論」でも、「批評」でも、「感想」でも、書きたいことを書きゃいいと思うんですけど、作品の内容に対して他人様の

「これこれの描写は必要ない」

というコメントを見て、首を傾げることが多々あります。

必要かどうかは、表現意図に沿って作家が決めることじゃない?

作家がそう描いた以上、あなたがどう思おうが、私がどう思おうが、足りないと感じる部分も余計だと感じる部分も、作家の業も含めてその作品は「そう」なんだよ。

「自分は作品の描写や展開の要不要を、作家本人以上に適切に判断できる」

という思い上がりはどこからくるの?

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

「この描写は必要ない」というコメントは、「感想」「評論」「批評」を超えて、「指図」だと思うんですよね。「こう描け」と言ってるのと等しい。

作家に対して指図する権利を持つのなんて、せいぜい場の提供者(編集者・編集部・プラットフォーム)か、いれば製作委員会やスポンサーや、「師匠」ぐらいまでじゃないのかと。

購読者であれ、批評家であれ評論家であれ、SNSの一言コメントであれ、消費者にしか過ぎないんで、金銭とバーターで「買わない、観ない、読まない」を行使する権利はあれど、

「作家に指図しない」

「作家に作品外で『必要性』を釈明することを求めない」

は金銭を払おうが払うまいが侵してはならない、最低限の分際だと自分は思うんですが。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

今巻の展開・描写が「表現規制」に相当するかというと、

「権力者が圧力を駆使して創作物の形を変えさせようとしている」

の「権力者」が「場の提供者」に過ぎない時点で、映像研には「出展しない自由」もあり、口論による闘争も含めて「合議」の範囲にもなり得たんですけど、体制側が「部の存続」を人質に言うことを聞かせようとした点で、一線を超えちゃいましたね。

ただマスコミが「第4の権力」と呼ばれるように、我々大衆の「ただの感想」もバズや炎上で数が集まれば「第5の権力」となり得る、無条件に免罪されるものではない、ということにも、大衆の一人として自覚的でありたいな、と思います。

ネットのプラットフォーマーや広告屋が、先に「第5の権力」になりつつある気もしますが。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

金森氏が作中で言うとおり、相手に「隙があった」のも確かですが、怒りを原動力にしたエキサイティングなエピソードで、また着地が単純な勧善懲悪的な展開に陥らなかったことも含めて、今巻も大変面白かったです。

さて、偉そうなことを書いた手前、過去記事で漫画作品に対して「指図」してる記事がないか、自分のブログをチェックしなければ…

 

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