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#生きてるうちに推してくれ 3巻 評論(ネタバレ注意)

霊が視える体質のミサキは、18歳で上京しスカウトされて地下アイドルグループのメンバーとなったが、霊が視える故の少女時代以来の挙動不審が原因でグループ内での人気はイマイチで、推してくれるファンは脳みそ見えかかってる霊だけだった。

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

出待ちのファン(霊)に付きまとわれているところをライブハウスの近所のお寺の坊さんに救われ、話したところ、お互いの「霊が視えるだけ」「無意識に霊を吹き飛ばせるだけ」という特異体質を知る。

坊さんは「俺と組んで『祓い屋稼業』で一儲けしよう」と持ちかけ、金というかアイドルとしての営業ノルマ(ライブ後のチェキ撮影1枚1,000円×20)に困っていたミサキは嫌々これに応じる羽目になった…

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

という、アイドルガール・ミーツ・ボーズな除霊コメディ。バトル漫画ではないです。

自分は名前は知ってるけど読んだことはない、『トクサツガガガ』の作者さんの現作。

坊さんの特異体質も「結界体質」というか無意識に一時的に霊を吹っ飛ばすだけのボディガード的な使われ方で、

除霊手段は主にミサキの「霊が視え話せる」体質を生かした人生(?)相談で成仏させる、というもの。

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

「ファンに対する地下アイドル」「霊に対する祓い屋」に、相手に対するホスピタリティが共通する、という視点で、アイドル活動での気づきや経験が除霊に、除霊の経験がアイドル活動に、相互にフィードバックされる、という建て付け。

ハイテンションなツッコミ芸が身上のギャグコメディ展開ですが、通底しているのは芽が出ない地下アイドルのメンバーでコンプレックスに満ちたミサキの「このままでいいんだろうか」という漠然とした不安。

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

ミサキの抱える漠然とした不安が、現世に未練を残した霊たちに対する共感のフックと、読者からミサキへの共感のフックになっています。

体裁は「アイドル&除霊」ですが、エピソードとしては課題解決型というか、「問題を抱えた依頼人の問題点を解きほぐして解明して解決策のヒントや気づきを与える」という、精神科医だったり弁護士だったり『美味しんぼ』だったり『ブラックジャック』だったりと、やっていることは少し似ています。

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

そう考えると、意外と「居場所」「嫉妬」「依存」「葛藤や傷心からの逃避」などの、現代的のデリケートな人間関係の悩みにキャッチアップしやすい建て付け。

ギャグコメディ進行ながら、ホスト依存や盗作騒動など社会的にセンシティブで危ない話題に手を突っ込みたがる社会派な面も(?)。

ミサキが所属する地下アイドルグループの人間関係がちょっと不穏な感じで未だ光明が見えませんが、ミサキが成仏できない霊たちとの対話を通して学んだことが、アイドル活動にどう活かされるのか、楽しみというか、「活かす…んだよな?」というか、

『生きてるうちに推してくれ』3巻より(丹羽庭/小学館)

「どうやって活かすつもりなんだ」というかw

 

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