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#だんドーン 1巻 評論(ネタバレ注意)

モーニング誌で連載、TVアニメ化・TVドラマ化もされるなど好評のうちに第一部が完結した、

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『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』作者・泰三子の新作。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

幕末、黒船の来航によって徳川260年の治世の太平は破られ、幕府を頂点とした武士階級による国論は割れ、それは将軍位の継承問題にも及んだ。

後の徳川慶喜を推す一橋派の急先鋒、薩摩藩主の島津斉彬は、茫洋とし空気が読めないながら大器の片鱗を感じさせる藩士・西郷吉之助を西洋の英雄・ナポレオンになぞらえ、新時代の日本のリーダーとなってくれることを期待し重用。

動乱の時代の重要人物として徐々に頭角を表し、幕府や他藩からも警戒される存在となりつつあった西郷の、そのサポート役として白羽の矢が立ったのは、

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

西郷と同じく賢君・斉彬公に心酔し、目端が効いて空気も読めて、悪いことも考えられちゃうツッコミ役の便利マン藩士・川路正之進。

後の明治政府下における初代の大警視(警視総監)、川路利良その人だった。

動乱の時代、果たして川路は斉彬公の命のもと、西郷吉之助のサポート役として日本を近代化に導くことができるのか…

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

薩摩藩士から幕末を経て明治初期に維新政府の要職を務め、「近代警察の父」「日本警察の父」渾名され、その語録が未だ警察官のバイブルとして読み継がれる、史実の人物・川路利良の伝記フィクション。

ja.wikipedia.org

漫画好き向けにメジャー作品を使って説明しようとすれば、『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』で「斎藤一の上司の警視総監だった人」という説明がわかりやすいでしょう。

『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』7巻(和月伸宏/集英社)

『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』7巻(和月伸宏/集英社)

『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』7巻(和月伸宏/集英社)

小柄で封建的な役人然として描かれてはいるものの、元・新撰組の斎藤一を怒鳴りつけ、喧嘩番長の左之助と胸ぐらを掴み合うなど、レギュラーで武闘派の大男相手に怯む様子のない、気骨のあるおっさんとして描かれました。デコッパゲてw

『だんドーン』では川路は長身の男として描かれているので「どっちなんだろう」と思いましたが、Wikipediaには身長は書かれていませんでした。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

「司馬史観」という言葉があります。

dic.pixiv.net

史実の年表に基づいた伝記フィクションは、エンタメとして出来が良いほど、

「描かれていることはすべて史実である」

と多くの読者の錯誤を引き起こしたり、実在した人間ではなく「キャラ」として「推し」の対象にさせたりする傾向があり、読むにあたって注意が必要です。

史書に残っていない人物の性格や言動のディティールは、作家の癖・好み・エンタメサービス精神に基づいた想像で「面白おかしく」補完されるフィクションです。

面白くないと読んでもらえずに打ち切りですし。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

思うに『だんドーン』は「伝記フィクション」の漫画に過ぎないので、『るろうに剣心』と併せて、身長が高かろうが低かろうが作品間で矛盾があろうが、自分は割りとどうでもよいです。

「ちょっと気になった」という程度の話です。

ただ「司馬史観」ならぬ「泰三子史観」を引き起こしかねないだけの質を伴った作品であるということは、注意が必要だな、と思います。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

語りたいことはたくさんあります。

作者の泰三子はおそらく鹿児島出身・鹿児島在住・鹿児島県警のご出身だと勝手に推察しているんですが、自分も鹿児島出身で、作者に対してちょっと

「どこ中?」「どこ署?」

という気持ちもあったりw

・作者・泰三子が背負う「警察」「鹿児島」の2つのルーツと「幕末」愛

・鹿児島育ちの郷土史事情、「偉人」たちへの距離感と評価

・離れた故郷・鹿児島への愛憎

・なんで川路を『ハコヅメ』のキャラ、源巡査部長の生き写しで描くのか

・斉彬公、西郷、川路のユクスエ、「幕末もの」としての期待

 

あまり一度に張り切って詰め込み過ぎたブログ記事を書くと疲れちゃうし、ちょっと時間も足りません。

焦らず、続巻の感想でおいおい書いていければと思います。

(おそらく作者と)作品テーマが同郷である贔屓目や『ハコヅメ』信者としての贔屓目も入ってしまっているでしょうが、舞台が幕末に変わっても相変わらずシリアス要素とコメディ要素、ご陽気さとダークネスが高速で混じり合って飽きさせない、期待の新作として申し分のない、文句のつけようのない出足の1巻。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

「少し幸福な木曜0時」が帰ってきました。先々が非常に楽しみ。

ブログ記事に「新撰組」タグを付けるのは、まだちょっと気が早いかな。やめときましょう。

 

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