架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。
元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。
自分は好きすぎて連載の有料のWEB掲載を毎話、毎週木曜日0時に即読みしてました。「現役漫画家で天才を3人挙げろ」と言われたら、自分は1人はこの人を挙げます。
今巻で「第一部 完」。
第二部の予定は未定で、作者は幕末を舞台にした時代ものの次回作を鋭意連載準備中(2022秋に連載開始だった予定が遅れている)とのことです。
「第一部 完」は、まあ勝ち逃げですけど、良いやり方だと思います。作者が疲弊したり幸福になれなかったりしたら元も子もないですから。
特に因果関係も共通する背景や傾向も何にもない「だからなんだ」ですけど、全23巻ッて『鬼滅の刃』と一緒ですね。あとマイケル・ジョーダンの背番号。
さて。
最終巻で描かれたのは、「現場は理不尽と矛盾の積み重ねで疲弊している」でした。
「警察」というのは様々な切り口があって、「社会の理不尽の駆け込み寺」であり「権力・体制側のシステム」であり「労働の現場」であり。
自分が書くのはエンタメとしての漫画の評論・感想であって、警察行政の批評ではないので割愛しますが、少なくとも「現場は疲弊している」というSOSを広く世論に訴えるにあたっては、エンタメの方が効くだろうな、と思います。
最終巻はほぼシリアス展開でしたけど、川合や藤のユクスエよりも、自分は北条係長の話が刺さっちゃいました。
毀誉褒貶の激しい巨大組織の、旧弊に染まって決して百点満点には描かれなかった人物で、エピソードが示すものも部下に範を示すべき上司がブラック労働していたという、決して手放しで美談として褒め称えられる話ではないんですけど、理不尽な現場で矛盾を抱えながらも誰かのために労を惜しまず働いて社会を支える、カッコ悪くてカッコいいおっさんを描かせたら一級品な漫画だったな、と思います。
「おっさん」をリアルに、なおかつ漫画のキャラ化して描くの、実は天才と呼ばれる男性漫画家でも若いうちはけっこう想像で描いてたり描けてなかったりするんですけど、まだ中年と呼ばれるには少し早い年齢の女性であろう作者の、10年おっさんを観察した経験値がモノを言ってるな、と思います。
さんざんいじり倒してましたけど、おっさん愛すごいですよねこの漫画。
なお巻末には描き下ろしの後日談あり。
いつか続きが読めるに越したことはないんですけど、自分はこの勝ち逃げされた曖昧な感じのお別れも嫌いじゃないので、続きが描かれることが二度となくても、それはそれで。
山田が何を言いかけていたのか、ちょっと気になりますが。
お疲れ様でした。
次回作の幕末もの、楽しみにしてますが、どうかご自愛ください。
警察官や漫画家に限らず、すべての職業人が幸せでありますように。
システムの一部とはいえ、最終的には個人ですし。
aqm.hatenablog.jp
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