母と死別、父は単身赴任でアメリカの大学で勤務。横浜の実家で暮らす百木田(からきだ)家の三姉妹。
長女でバツイチで出版社編集のイチカ。
次女でコミュ障で会社員生活に馴染めないツグミ。
三女で高校生で闊達な自由人志向のミノル。
神保町で古書店を営む祖父が亡くなり、遺言で横浜の自宅を売却、神保町の店舗 兼 住居に転居することに。
祖父の古書店に愛着があり、今の会社の仕事には愛着がないツグミは、姉妹を代表して古書店を継ぐことを決意した。
勤め人をリタイヤして趣味の延長マインドで悠々自適に古書店経営とか、人文系のちょっとした憧れではありますよね。
という、冬目景の新作は本の街・神保町の古書店を舞台にした三姉妹の物語。
あとはこんな感じ。
人物相関図、なぜか巻末の次巻予告ページに掲載しててワロタ。
「三姉妹〜四姉妹」ものの作品は、「長女の事情」「次女の事情」「三女の事情」とそれぞれをヒロインとするエピソードが複数同時に並行して進む作品が多いですが、この作品もそういう感じです。
ギャグコメの『みなみけ』までをカウントしても、どこか物憂げでローテンションな日常ものが多いジャンル、というイメージ。
作品を貫く大きな縦軸、というよりは中小の縦軸が複線で走っていて、「イチカの人生事情」「ミノルの青春事情」「ツグミの古書店 繁盛期+α」に「幻の画家の遺作を巡るミステリー(サスペンス?)」要素。
横軸は「古書店のお仕事描写」「長女や三女の恋愛模様」「三姉妹の日常生活の会話劇」などなど。
アンニュイというかどこか物憂げな画風と間で、文学的な含蓄を勘ぐられがちな作家ですが、今作を見る限り古書店経営の静かなダイナミズムを日常風景やパーソナルな事件も交えながら「普通」に描こうとしているように思います。
これまでの冬目景作品に通底していた、なにかバッドエンドを予感させる物悲しげな空気感、無常を感じさせる淡々としたイメージが薄れて、もう少しカジュアルに読者に楽しんで欲しい、というか。
なんというか、漫画を読んでいるというよりは、知り合いの近況、暮らしぶりや恋バナを聞いているような感覚。
ドラマティック・ダイナミックにストーリーやミステリーが進展するわけでも、抱腹絶倒のギャグコメディが炸裂するわけでも、スイートでラブリーなラブコメディが展開されるわけでもありません。
遅々として、でも「日常漫画」と呼ぶには1巻冒頭からすると着実に動いている(「前に進んでいる」のかどうかは、わかりません)人間関係。
「丁寧な暮らし」という言葉を漫画で具現化するように、ゆっくりと、じっくりと。
大人になった姉妹が、大吟醸をちびちびやりながら、子ども時代思い出を語り合う。
なんてことないシーンですけど、良いですよね。
丁寧に描かれた丁寧な日常、丁寧な気持ちの移ろいは、それだけでエンタメたり得るんだな、という。
NHKの朝ドラを観続けたことが自分はないんですが、こういう感じなのかな、という。
今巻はあるきっかけでツグミの大きな勘違いと、その解消。
要するに、ツグミの気の持ちようひとつなんじゃねえかという、面倒くさくて、可愛いねw
aqm.hatenablog.jp