「ガラスの仮面」と同年、1976年から秋田書店の「月刊プリンセス」で連載開始された少女漫画。
作者の細川智栄子は88歳。『ガラスの仮面』作者より16歳年長。
1月1日がお誕生日でいらっしゃるので、年明け早々89歳になられます。
88歳で現役で年イチで単行本を出しているというのは、『ガラスの仮面』をはじめ、いろんな漫画の読者にとって希望の光ですね。
近刊は「細川智栄子あんど芙~みん」として、「芙~みん」なる人物が共著者としてクレジットされています。おそらくアシスタント的な役割や作話の相談役を果たしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、こちらは5歳下の実妹さんとのことです。
アメリカの財閥令嬢でエジプトに留学中の高校生・キャロルは、古代の墓を発掘したことから王家の呪いを受け、古代エジプトにタイムスリップする。いろいろあって、未来を識る「ナイルの姫」として古代のエジプト王・メンフィスと恋仲になり、結婚して「ナイルの王妃」となったキャロル。
その後、アレンジや変化球はあれど基本的に
①キャロルが近隣諸国のどれかにさらわれる
②メンフィスが救出に向かう(戦争)
③束の間のイチャラブ
④なにかの拍子で現代にタイムスリップ(古代の記憶は消えてる)
⑤行方不明扱いだった現代で実家に保護され穏やかな日々
⑥なにかの拍子で古代にタイムスリップ(古代の記憶を思い出す)
の基本的なサイクルを45年69巻かけて繰り返している作品。
誌面はやや白くすっきりした気がしますが、画風・演出ともに70年代の空気が50年の時を超えてそのまま生き残っているような作品。
演出もこう、何回もやる、何回も言う、っていうw
同じことを何度でも嘆く、何度でも喜ぶ、何度でも怒る、という繰り返しで感情を表現するスタイル。
ドラマティックな感情表現や美麗で豪奢な描写が、ちょっと宝塚歌劇が思い浮かびます。
前巻以前以来、アルゴン王によるエジプトへの浸透侵攻と、トラキア王によるナイルの姫(キャロル)暗殺計画が同時進行、今巻でそれぞれが一旦決着。
二人に次ぐ副主人公格のヒッタイト国・イズミル王子は、相変わらずトラキア王に歓待の名目で幽閉され中。
トラキア王の娘・タミュリス姫がイズミル王子に一目惚れしたことから、なんとか娘の片想いを成就させてやりたい、そのために
「よ〜しパパ、イズミル王子を監禁しちゃうし、イズミル王子の想い人のナイルの姫は暗殺しちゃうぞ〜」
というミラクル親バカなトラキア王。ちょう迷惑。
イズミル王子は囚われのピーチ姫というか、なんか「セックスするまで出られない城」みたいになっとんなw
イズミル王子、ツラがいいのでたぶん女性読者人気があって、作者からも気に入られている「アルド・ナリス枠」かと思うんですが、タミュリス姫に横恋慕されトラキア王に幽閉されて一見気の毒な境遇に見える反面、自分も人妻のキャロルに横恋慕して誘拐したりしてきたので、あんま他人のこと言われへんやんけw とは思いますw
今巻、ようやく幽閉からの脱出の兆しが。
こうなったら展開早い(?)作品なので、現実の来年か再来年ぐらいにはようやく脱出できそう。
あと今巻の見どころとしては、主人公夫婦の旦那の方・メンフィスが
「ムカつく」
って言いました。おお、令和(?)ナイズ。
あと、確かこの作品においてキャロルにとっての「現代」は西暦何年なのか、詳細ははっきり描かれていないんですが、1巻では
「今世紀に入って七十いくつかの王の墓が発見され〜」
と、連載開始の1976年に合わせて20世紀であることが示唆されていたんですが、今巻のキャロルのモノローグを見ると
「21世紀」に変更になっているようです。
同年連載開始の、昭和ワールドばりばりの『ガラスの仮面』も
近刊では携帯電話が登場するなど、時代に合わせて現代ナイズされている部分があります。
『王家の紋章』、『ガラスの仮面』の2作品の連載期間のうち、1976年〜2000年が25年間なのに対し、2001年〜2023年が23年間ですから、あと2年で連載期間の21世紀分が20世紀分に並んでしまうんですね。
ちなみに電子書籍の1巻の奥付を見ると、平成25年時点で版数が142版です。
いやー、すんげえ。
1巻でのミイラの発掘の時点で、メンフィスが18歳で死亡することが示唆されており、その時キャロルはどうなるのか。
引き続きガチンコで今後の展開を楽しみにしたいと思います。
ようし、俺も長生きするぞう。
ではまた、来年お会いしましょう。
aqm.hatenablog.jp
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