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#王家の紋章 68巻 評論(ネタバレ注意)

「ガラスの仮面」と同年、1976年から秋田書店の「月刊プリンセス」で連載開始された少女漫画。

作者の細川智栄子は87歳。『ガラスの仮面』作者より16歳年長。

87歳で現役で年イチで単行本を出しているというのは、『ガラスの仮面』をはじめ、いろんな漫画の読者にとって希望の光ですね。

近刊は「細川智栄子あんど芙~みん」として、「芙~みん」なる人物が共著者としてクレジットされています。おそらくアシスタント的な役割や作話の相談役を果たしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、こちらは5歳下の実妹さんとのことで、82歳でいらっしゃるはずです。

「王家の紋章」68巻より(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)

アメリカの財閥令嬢でエジプトに留学中の高校生・キャロルは、古代の墓を発掘したことから王家の呪いを受け、古代エジプトにタイムスリップする。いろいろあって、未来を識る「ナイルの姫」として古代のエジプト王・メンフィスと恋仲になり、結婚して「ナイルの王妃」となったキャロル。

その後、アレンジや変化球はあれど基本的に

①キャロルが近隣諸国のどれかにさらわれる
②メンフィスが救出に向かう(戦争)
③束の間のイチャラブ
④なにかの拍子で現代にタイムスリップ(古代の記憶は消えてる)
⑤行方不明扱いだった現代で実家に保護され穏やかな日々
⑥なにかの拍子で古代にタイムスリップ(古代の記憶を思い出す)

の基本的なサイクルを40年68巻かけて繰り返している作品。

誌面はやや白くすっきりした気がしますが、画風・演出ともに70年代の空気が50年の時を超えてそのまま生き残っているような作品。

「王家の紋章」68巻より(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)

演出もこう、何回もやる、何回も言う、っていうw

同じことを何度でも嘆く、何度でも喜ぶ、何度でも怒る、という繰り返しで感情を表現するスタイル。

ドラマティックな感情表現や美麗で豪奢な描写が、ちょっと宝塚歌劇を思い浮かべますが、そういえばこの作品って宝塚歌劇化ってされたんでしたっけ?

「王家の紋章」68巻より(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)

今巻は前巻に続き③の途中な感じで、キャロルが前々巻でメンフィスに救出されエジプトに帰還、前巻で意識不明から回復し、本格イチャラブのターン!

のはずなんですが、地中海沿岸の列強が富国エジプトの権益と、幸福をもたらす「ナイルの王妃」の身柄を狙って暗躍、相変わらず落ち着く暇のない展開。

あの、「異世界(過去世界)転移もの」の古典であると同時にイケメンパラダイス展開の古典でもあって、作品のカタルシスとしては未来人の知識無双と、各国のイケメン王・王子たちからモテモテだけど独占欲強めな俺様系最強イケメンが護ってくれる、乙女ゲーの原型なんですよね。

サブイケメン一番手のヒッタイト国イズミル王子が人妻になったキャロルにストーカー気味に横恋慕、そんなイズミル王子を拉致して幽閉したトラキア国のタミュリス姫がストーカー気味に横恋慕、娘になびかないイズミル王子に腹を立てたトラキア王がキャロル暗殺を狙い、

「王家の紋章」68巻より(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)

それとは無関係にキャロルに横恋慕のアッシリア王アルゴンが飢饉による暴動を扇動してエジプトに侵攻。

と、③にしてはゆっくりイチャイチャしてられない忙しい展開。

流れとしては、アッシリア王アルゴンを退けたら、キャロル暗殺未遂への報復でトラキア国に遠征になる感じなんですかね。

横恋慕の連鎖で毎回戦争してて民衆には迷惑極まりない話ですが、

「王家の紋章」68巻より(細川智栄子あんど芙~みん/秋田書店)

「古代エジプトに転生したら列強の王にモテモテで地中海沿岸が大戦争!」な感じで、なんというかヒロイン冥利につきるヒロインだなと。

ではまた、来年お会いしましょう。

 

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