#AQM

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#ぶんぶくティーポット+ 8巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

4~6コマの変則ページ、フルカラーで絵本みたい。

人間に化けて暮らすのたぬき一家、主人公はたぬき妹"ふみ"になろうかと思います。ふみの友達のキツネ女子、ネコ女子、コウモリ女子との学園生活など。

まんだらけ刊という変わり種。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

作画担当とネーム担当のコンビによるペンネームだそうなんですけど、絵がおしゃれで可愛くて、でもネタが絵の可愛さに甘えずにゆるくてシュール、たまに哲学、大喜利っぽいネタも。打率も高いけど長打も多い。

一見ファンシーっぽい絵ヅラですけど「毒入りファンシー」というか、売り文句みたら「キュート&ブラック」って書いてて「上手いこと言うなあ」と言う感じ。

ネタの発想の飛び方とキレに加えて、キャラものとして見ると女子高生の非日常な日常コメディなはずなのに、気がついたら女子高生ヒロインの母親・あやさんが一番可愛いという、珍妙な美少女日常ものにw

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

あやさん、かわよ。

テイストをコメディ基調に絞りつつも、日常要素に加えて時世を取り込んだ社会風刺、シュール・リアリズム、ファンタジー、SF者としての素養もアリ、となんというかトキワ荘作家じみた古き良き万能漫画家感あります。毒入りの。

良い知らせと悪い知らせがあります。

良い知らせは、今巻8巻が本作今年2冊目であるということ。嬉しい!

悪い知らせは、今巻8巻が最終巻となったことです。悲しい…

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

愛する作品が終了する度に、『動物のお医者さん』の最終巻のあとがき漫画のこのコマを思い出します。

『動物のお医者さん』12巻より(佐々木倫子/白泉社)

永遠に読み続けていたい願望に反して終わってしまうので、自分も子どものように理不尽に感じてしまいますが、作者自身が語る以外の「終わる理由」についてアレコレ憶測するべきではない、という程度には大人の分別も一応あるつもりです。

描いてくれた作者陣と併せて、本作を長く出版してくれた「まんだらけ」にも感謝の拍手を贈りたい。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

最終巻もこれまでと変わることのない、愛らしいキャラクターたち、わかりやすさと切れ味を両立したギャグコメディ。

そして

「人間に化けて人間社会に紛れて暮らすタヌキの一家」

という設定を活かした「アウトサイダー」「マイノリティ」としての視点からの社会風刺、その家族の中でも唯一人間に化けられない、更なるマイノリティとしての「お兄ちゃん」の存在。

「風刺」というのは、結局のところ世界や社会の理不尽に対する怒りや悲しみ、失望や愚痴を伴う抗議、その婉曲表現であろうと思います。

本作は更に婉曲に、日常ギャグコメディに垂らしたたった一滴の「風刺の毒」で、癒して笑わせると同時にほんの少しだけ、怒り・悲しみ・失望・愚痴などのマイナスの感情と、その背景にある世界の理不尽に対して、本当にほんの少しだけ読者の目を向けさせます。

その「シニカル」「ニヒル」と呼ぶにはあまりに押し付けがましさのない奥ゆかしさが、自分はとても知的で優しいものであるように感じます。

今巻作中の言葉を借りれば、

「日常ギャグコメ漫画を通して、人と社会をほんの少しだけ良く変えようとしてる」

かのような。

このポップでキュートな画面とシンプルなネームの裏に、どれだけの知識や思索や感情の含蓄、願いが込められているんだろうか、と。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

何気なく、シンプルで、謙虚ながら、裏打ちする膨大な「人類の学び」を感じさせる、お兄ちゃんの一言一言。

そして最終巻らしくドラマチックながら少し甘くて優しい、この作品らしい最終エピソード。

すべての登場人物が愛おしく、彼女たちの新エピソードがこれ以上増えないのは本当に残念ですが、前シリーズ5冊+今シリーズ8冊は、最終エピソードのお兄ちゃんのように時間を超えて、私の今後の人生で何度も読み返して何度も新たな気づきを与えてくれる、「人生のお供」になる作品だろうと思います。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

新作でまたお会いできることを楽しみにお待ちしています。

お疲れ様でした。

こんなに面白い漫画を描いてくれて、本当にありがとう。

 

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