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#怪獣8号 11巻 評論(ネタバレ注意)

現代、ただし頻繁に怪獣に襲来され「怪獣大国」となった日本。「防衛隊」が組織され、襲来の都度、怪獣を討伐することで社会が保たれていた。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

かつての防衛隊志望に挫折した怪獣死体処理清掃業者・日比野カフカ(33♂)は、防衛隊志望の後輩に触発され再び入隊試験受験を決意するものの、いろいろあって人間サイズの怪獣に変身する体質となってしまう。

目撃情報から防衛隊に「怪獣8号」として指名手配されたまま、怪獣変身体質を隠したカフカの防衛隊入隊受験が始まった。

という、「SF」でいんだよねこれ。「バトル」もつけていいんかしら。という王道変身ヒーローもの。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

作品コンセプトとして他とは毛色の違う「ディザスター(災害)もの」として期待した向きには、怪獣のヒト型化・人間サイズ化によって「結局、普通のジャンプバトルもの」に落ち着いちゃったな、ってのはあります。

防衛隊隊員でありながら密かに怪獣8号に変身して怪獣を倒す、「ザ・変身ヒーロー」な展開でしたが、既に防衛隊内で「正体バレ」が発生済。

主人公は隊により隔離され処断が検討されたものの、どうにか存在を許され、現在は他の隊員から隔離されたまま幹部による戦力アップと「変身に頼り過ぎない戦い」のための修行モード。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

主人公が後ろに下がってる間、仲間の主要メンバーたちもそれぞれ主にネームド怪獣の力を取り込んだ強化が図られた後、新展開。

強力な怪獣が同時多数に発生する、「群発災害」編。

展開的には強化された主要メンバーたちのお披露目バトルと、主人公の前線復帰・仲間との合流へ、という流れ。

肝心な場面での見開き、ケレン味たっぷりのセリフと大見栄、強さがエスカレートしていく展開、ピンチになると覚醒する主人公たちや颯爽と現れるパワーアップした味方たち、という、ジャンプのバトル漫画のお手本のような漫画作品。

『幽★遊★白書』の有名なシーンですが、

『幽★遊★白書』14巻より(冨樫義博/集英社)

このシーンが収録された14巻の発行は1993年、およそ30年前です。

『幽★遊★白書』の作品史上、このコマが描かれたのは、肉弾戦・格闘戦中心のバトルから「仙水編」に入って変則的な能力バトルへの転換期における主人公の幽助の

「それでもやっぱり俺は肉弾戦と霊丸のスピードとパワーで勝負するぜ」

という宣言でもあり、幽助のこのスタイルは後に『ハンター』の強化系のゴンにも引き継がれました。

同時期に『JOJO』とかもあって、ジャンプバトル漫画史においてもざっくり言えば、バトル描写の王道が肉弾・格闘バトルから変則的な異能力バトルに移行していく過渡期の始まりだったように思います。

『怪獣8号』は「ジャンプバトル漫画の王道」というか、「王道しかない」というか、

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

30年経っても相変わらず主人公が真っすぐいって右ストレートでぶっとばすシーンが見せ場の漫画です。

ドラマ作りも、バトルのクライマックスに回想シーン絡みのクソデカ感情でキャラが覚醒する、近年のジャンプバトル漫画の王道そのもの。

バトル展開も「1on1のタイマン×5」で、同日発売で自分もさっき読んだ絶賛バトル展開中の『ウィッチウォッチ』の最新刊と「再放送か」ってぐらいそっくり同じです。

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この辺はもう、新規性とかオリジナリティとかを求めるの野暮ってもので、

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

伝統芸能というか、『水戸黄門』の印籠というか、『遠山の金さん』の桜吹雪というか、むしろ作り手というよりは読み手側の

「予定調和」「実家のような安心感」「やっぱりジャンプはこうでなきゃ」

という希求もあるんだと思うんですよ。

実際、ド王道・伝統芸能の燃える展開としてはよくできてるし、全部が全部の漫画に「作家性」を強く求めるのもちょっと息苦しいし、たくさん漫画がある中でそういう漫画が未だにあったって、未だに売れてたって、それはそれで良くね?と。

定石通りで目新しさはないんですけど、嫌いになれないというか、読んじゃうというか、ぶつぶつ言いながらたぶん結構この漫画好きなんだよな、俺。

などと言いながら、今巻冒頭の東雲小隊長、すげえ人間的でよかったなあ。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

東雲さんを助けたカフカ、よくやった。それでこそ主人公だ。

いい加減しつこい9号を、真っすぐいって右ストレートでぶっとばせ。

 

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