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#姫様“拷問”の時間です 14巻 評論(ネタバレ注意)

国王軍と魔王軍が衝突する世界。

国王軍の王女にして第三騎士団の団長・姫は、意思を持つ聖剣エクス(ツッコミ役)と共に魔王軍に囚われの身となった。

戦局を有利に導くべく、魔王軍はあらゆる手を使って敵の幹部である姫から秘密の情報を引き出そうとする…

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

という、ファンタジー世界を舞台にしたゆるーいコメディ漫画。

タイトルにも作中のセリフにも「拷問」という物騒な単語が踊りますが、中身はストレスなしのギャグコメディ。半分は実質グルメ漫画。

あとはもう黄金のワンパターンの手を変え品を変えの繰り返し。牧歌的で微笑ましい馴れ合いの世界。登場人物が全員なにかしらポンコツです。

ワンイシュー・ワンパターンですぐ飽きられるはずの定型フォーマットをあの手この手でバリエーションを持たせることに血道を上げる作風。

毎話すべての登場人物の言動が本末転倒なのに、全員が本末転倒であるが故に調和してしまっていて「その手があったか」「そんなのアリなのか」「一体なにを読まされているんだ」と驚きと唸りと笑いで迎えられる作品。

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

ほぼ毎回、「姫様、拷問の時間です」と作品タイトル回収からスタートしつつ、ちょっとズラしてるだけなんですけど。

アニメもちょうど今やってますね。

「ワンパターンか」と言われれば「ワンパターンだ」と答えざるを得ないんですけど新規性を持ったバリエーションは豊かで、

「新規性を持ったバリエーションが豊かならワンパターンではないのでは?」

「ワンパターンってなんだ?」

ってなります。「予定調和」ではあるんですけど。

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

自分もこないだこんな風になったわー。

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『水戸黄門』とか『サザエさん』とか長寿コンテンツというのは「ワンパターンの枠」の中のバリエーションで泳ぎつつ、落としどころを視聴者・読者が安心して観られる・読める「予定調和」の枠に持っていく、という営みが求められていましたが、そんな感じ。

この作品にはもう一つ、「作中世界の設定」というよりは「拷問」という概念が優しい世界方面にちょっとずつ狂っていく、ギャグ漫画としての「世界観の特殊性」もありますが。

出オチ漫画で2〜3巻でネタが尽きそうな立ち上がりから、作者自身の力で完全に「伝統芸能」的な作品のフォーマットを確立してしまいました。

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

もしからしたら『水戸黄門』とかも、最初の頃は

「身分隠した偉いさんが悪者退治の出オチドラマ」

「毎回悪事を突き止めて荒事あって印籠出して解決して、ワンパターンですぐ終わるやん」

とか思われていたんでしょうかね。

あと、作中で描かれる「子ども(たち)に対する大人の振る舞い」についても言及してみたいんですが、長くなるのでまた今度。

今巻も優しく可愛く、でも切れ味鋭く、楽しく面白く。

そういえば、この作品の初期数巻の頃までは自分は「拷問」という概念が苦手なんでこの漫画を敬遠してたんですが、この作品タイトルは得してるんだろうか、損しているんだろうか。

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

「漫画の中身を読まない親」の立場だったら、けっこう子どもに買い与えにくい、いかにも誤解を受けそうなタイトルだとは思います。

今となっては自分にとってはどっちでも良いことですが、こうしてアニメ化にまで至って、神様が作者に

「タイムマシンで過去に戻って作品のタイトルを一度だけ付け直していいよ」

と告げたら、作者はどうするだろうか。

『姫様“拷問”の時間です』14巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

結構、「変えなくていいです」と言いそうな気もしますね。

 

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