「役者は親の死に目に会えないって言葉があるじゃないですか
さらさはどうすれば良かったんだろう」
「…そうだな 正解はね 無いんだ
あるのは結果だけだ」
AKB的なグループで総選挙13位ながら握手会でファンに「キモチワルイ」つって炎上、追放されるように卒業した元アイドル、無表情クールで人嫌いの愛。
すみれの花咲く頃、宝塚的な歌劇団に付属する養成機関・音楽学校への入学を果たし、そこで出会ったのは長身と強い体幹を持ち天然で天真爛漫で天才肌の少女・さらさ。
10代半ばで人生を自分の意思で歌劇に投じた"強い"女の子たちの、清く正しく美しく、熱くてシビアな楽しい青春。
本科生の卒業公演、オーディションでティボルト役を射止めた予科生の「ロミオとジュリエット」寸劇当日。東京の育ての祖父が倒れた一報に、舞台を諦めて帰京したさらさ。心が揺れるさらさががかけられた言葉たち。
一方、さらさの代役を買って出た愛。さらさが憑依したようなその芝居は…
その他、謎の美女。さらさの出生の秘密?愛の転向?そしてあれから1年。
5巻以来の晴れ舞台への高揚感から一転。演技の世界から離れて、地元に帰ったさらさと、若造やおっさんや爺さんとの、この作品としては地味目な絵面のエピソードですが、ともすれば夢に向かってまっしぐらの超人のように描かれかねない天才ヒロインたちが、家族への愛情や別離への不安を抱えたり、あるいはクールな仮面が剥がれ落ちて涙を流して謝罪したり、ただの一人の弱い人間に戻って、また超人を目指して立ち上がる重要なエピソード。先々への気になる伏線もあり、新入生のどんな後輩が入ってくるかも見ものですね。
イケメンと美少女以外、おっさんおばさんやジジババの描写がウィークポイントな作品は、少女漫画に限らず少なくない印象があるんですが、この漫画はジジイの絵も言葉も含蓄と存在感があって、孫娘を遺して先に逝く心残りと足枷になりたくない親心の吐露、その切実さと愛情。ちょっと「おいしい関係」の千代ばあを思い出す。
不幸な人間関係のリアリティを描くことがそうであるように、そうあって欲しい美しい愛情を描くこともまた、漫画の仕事だよねと思う。
「さらさ あのな
どうしたって俺ぁお前より早く死ぬよ」
「俺が居なくなったその先のお前が
泣いているか笑っているか
それだけが気がかりだ」
「さらさ お前さんは舞台に立って
沢山の人に愛されなさい」
「道の進むまま 求められるままに」
次巻は3月の予定とのことです。
aqm.hatenablog.jp