#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#寄宿学校のジュリエット 16巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

「歴史を教える事は重要よ
 でも それをどう感じてどう受け止めるかは
 私達が自分で決める
 私はそれをダリア学園で学んだわ

 国際情勢?裏切り?関係ない
 好きなものを好きと言えないなんてつまらないわ
 私はこの国をもっと自由にする」

最近?まで戦争してた東和国とウェスト国の国境の島、ダリア島に設立された両国共有の名門・ダリア学園。木刀振り回して万年抗争状態の両国派閥のリーダー同士、黒犬派の犬塚露壬雄(ロミオ)と白猫派のジュリエット・ペルシアが内緒で禁断のお付き合い。学園ラブコメ版ロミオとジュリエット。

秘密のお付き合いも学園中にばれ、一悶着あったものの一件落着。最終章、修学旅行編でウェスト国へ。

実質13巻で一度完結したと言ってもいい作品の延長戦、この巻で完結。


元作のモンタギュー家とキャピュレット家の代わりに二人の仲の障害となる背景舞台として用意された、表面上は和平が結ばれつつも双方の国民感情が差別感情も伴って非常に険悪な隣国同士の諸情勢は、ぶっちゃけてしまうと連載当初から現実の日本と韓国の関係を強く想起させるもので、ただの少年誌のラブコメ漫画がこの広げた風呂敷をどう畳むのか、自分は興味深く読んでいました。

そういう意味では、およそ現実の両国の不和の解消に参考になるようなアイデアは微塵もなく、主人公補正は効きまくるわ、脇役は特権階級特権を振り回しまくるわ、旧弊から抜け出せない大人達を若者パワーでぶっ飛ばすぜ!で大人側も「私の負けだ…」的なこと口走り始めるわ、ご都合展開の挙句の「俺たちの戦いはこれからだ」エンドで、およそ漫画だからこそ上手くいってるに過ぎないベタで性善説で能天気な「ぼくらの七日間戦争」みたいな終わり方。

ですけど、この漫画はこれでいんだと思います。少年少女が未来を自己決定する意志を示し手を取り合って困難に立ち向かって希望を掴み取る、ポジティブなメッセージを示すことが少年漫画の第一義であって、そういう意味でとても王道な少年漫画でした。大人なのになんで読んでますか自分。そもそも日韓関係改善の筋道を示すとかラブコメ漫画の仕事じゃねえしな。

勝手な想像ですけど、作者さんも編集さんも連載期間中に諸々の事件で更に日韓関係が急激に悪化していく中、ラブコメの設定のために広げた風呂敷が思った以上に意味を持ってしまって、一歩間違えばセリフの一言、絵の一コマが大炎上しかねない難しい舵取りを強いられて、言いたいこと・キャラに言わせたいこともたくさんあったんじゃねえかな。よく我慢したと思うわー。勝手な想像ですけど。


ロミオとジュリエットをモチーフに、元作の悲劇の結末をどう乗り越えて少年漫画のラブコメとして読者に提示するか、13巻までの第一段階がロミオとジュリエットが二人で生き延びて結ばれる物語だったら、延長戦の第二段階は間違った世界を変えるためにみんなで戦っていく物語、というお話でした。1巻時点でこそこそしていた二人に最後は本当にたくさんの仲間ができました。

前の巻で世界を変える言うてたしね。少年漫画としてはこれしかないというエンディング。そして1年後、卒業。そして7年後。ロミオはそうなるし、二人はそうなるわね。

戦うっつってもなー、第1話から主人公とヒロインが模造刀を振り回してバトってる学園もの、というスタートからして珍妙なラブコメで、最終巻も「バルコニーの少女に忍んで会いに行く少年」という元作オマージュありつつも、相変わらず最後の最後まで剣振り回して「るろうに剣心」みたいに闘ってるわ、闘いながらガンダムみたいに叫びながら討論してるわ、どこがラブコメでどこがロミオとジュリエットやねんという、最後までこの作品らしい最終巻。ジュリエットが「牙突!」とか「九頭龍閃!」とか叫び出すんじゃないかとハラハラしたわ。

終盤のどんなシリアス展開の最中でもバカコメぶっこんでいくスタイルも矜持のようなものを感じたし、ジュリエットパパのちょっぴり苦いハッピーエンドも渋くて少し切なくて良いエピソードだった。

 

約4年間お疲れ様でした。ツッコミどころ満載のおかしなラブコメでしたけど、とても楽しく読みました。

なんか次回作はマジもんのバトルものとか描きそうな気がすんな、この人。

 

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