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#修羅の刻 19巻 / #前田慶次 かぶき旅 2巻 評論(ネタバレ注意)

なんで2冊一緒くたなんだという話なんですが。

 

「誾千代の形見だ」

「形見?」

「雷切 折れたのを誾千代が磨上げ大脇差とした」

「わしが貰うてよいのか?」

「修羅の刻」は長く月刊マガジンのエースを張った格闘漫画「修羅の門」の同作者によるスピンオフで、主人公の少年格闘家・陸奥九十九の一子相伝の古流武術「陸奥圓明流」を継いできた祖先たちが、時代時代の強者たちと闘う姿を描いた歴史フィクションです。宮本武蔵から始まって新撰組や雷電と闘ったり、源義経や織田信長や坂本龍馬を歴史の裏で支えてきたとかそういう話。

今巻は前巻で双子の兄・陸奥狛彦が闘った「東の本多忠勝」編と対になる、双子の弟・不破虎彦が闘う「西の立花宗茂」編。

 

「此度の御前仕合!宗茂の代わりにこの誾千代が出ます!」

「貴殿が前田慶次殿であろう!我が薙刀を受けてみるがいい!!」

一方の「前田慶次 かぶき旅」は隆慶一郎の原作を原哲夫がコミカライズして少年ジャンプで好評を博した、戦国時代のいくさ人で傾奇者の前田慶次郎利益の一代記「花の慶次」、の作者や編集者が他社に引っ越した後の非公式スピンオフってことでいいのかな。本編の関ヶ原の戦いの後、上杉家に従って京を離れる前後のタイミング。

前巻で肥後の豪傑・加藤清正を訪ねた慶次が、南蛮から来た海賊まがいの悪漢たちが起こす騒動に巻き込まれ…という話。てっきり慶次が清正と組んで海賊退治で大暴れ…かと思ったら2人は立会人に引っ込んで、領主・加藤清正の御前試合で決着をつける役に手を挙げたのは、いくさ人として名高い立花宗茂でした。


というわけで、毎回ゲストをお迎えしてお送りする「徹子の部屋」みたいな歴史ものバトル漫画の2作品の、1週間も開けずに出版された2冊の最新刊は、示し合わせたわけでもないだろうに、どちらも戦国時代後期を舞台に九州の雄・立花宗茂とその妻の女傑・誾千代が主役でした。

立花宗茂は「戦国無双」とかの近作にも確か登場済みでしたか、戦国時代の存在感では決してマイナーな存在ではないですが、信長とかにはメジャー度では及ばず、なかなかフィクションの題材に選ばれにくいんですが、面白い偶然ですね。

不破虎彦vs立花誾千代に不破虎彦vs立花宗茂、前田慶次vs立花誾千代に前田慶次vs立花宗茂です。天国で立花夫妻が目を丸くしてそう。もうついでに不破虎彦vs前田慶次もやればいいと思う。


どちらも息の長いシリーズで良くも悪くも黄金のワンパターンで固定ファンを獲得している反面、ややマンネリ気味な作品ではありますが、立花宗茂夫妻の扱いや描き方に個性が出てて面白いですね。

どちらもIFものではあるんですけど、嘘のつき方が「修羅」が史料に矛盾しない範囲で隙間に創作を詰めて裏側を作劇するのに対し、「前田慶次」は史実のイメージを膨らまして豪快に原哲夫ワールドに。

描写も「修羅」が立花宗茂がどんな人物だったかを生真面目に丁寧に(長文で)説明して好奇心を満たしてくれる(代わりにテンポを落としてる)のに対し、「前田慶次」の「俺たちは描きたいことしか描かねえから立花宗茂がどんな奴だったかぐらい自分で調べろ」と言わんばかりの描写も、それぞれの作品らしくて読み比べると面白かったです。

女傑・誾千代の描かれ方もそれぞれ両作らしく、笑えるぐらい違います。

総じて立花宗茂・誾千代とも、信長・秀吉・家康には及ばないものの日本史と郷土のスターなので、良い扱いでかっこよく描かれてます。

他、上泉伊勢守信綱、丸目蔵人、タイ捨流、宮本武蔵、などの共通ワードが登場。「修羅」の過去巻に登場済みの柳生兵庫助も「前田慶次」の今巻に若き日の姿で登場。


特にオチはないんですけど、同時期に発売された2冊がどちらも立花夫妻が主役で読み比べて面白かったという話でした。

自分は島津の国の人なので、同じ九州内の立花ってあんまり目が行かなかったんですが、ちょっと興味が湧いてきました。

 

修羅の刻(19) (月刊少年マガジンコミックス)

修羅の刻(19) (月刊少年マガジンコミックス)

 

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